FN109号
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12満月と猫月がきれいに見えるまちなのだろうか。ふだんは降りることのない「月江寺」という駅で電車を降りる。その日はタイミングよく満月で、富士山のかたちも綺麗に見えた。駅前通りを歩いていると、近くの居酒屋から出てきた白黒のネコがこちらへ歩み寄ってくる。人懐っこく、私のまわりを自由気ままに歩いていた。白黒で顔の模様が八割れ(※)だったので、そのネコを「はちさん」と勝手に名付ける。ネコ好きの私はひたすらシャッターを切った。はちさんは、寝転がったり背を向けたりと私を気にも止めていないようすだ。しばらくすると、はちさんはもとの場所へと戻っていった。 この出会いはドラマの一場面のようで、私はすっかり主人公になった気分でいた。なじみのない場所を歩くと、お店の看板やポストが特別に見えてくる。自分だけが知っている場所を見つけたようで、思わず鼻歌をうたいそうになった。次に来るのはいつになるかなと、はやる気持ちを抑えながらカレンダーを見つめた。富士山が日々の営みを見守ってくれているようだ(2021年10月11日)阿部くるみ(地域社会学科2年)=文・写真その日、携帯の歩数計は10 キ ロ歩いたと記録していた。こんなに歩いたのはいつぶりだろう。疲れよりも楽しさがまさって、また来たいと思える。歩くたびにお気に入りの場所が増えていく。このまちをもっと知りたくなり富士山駅と月げっこうじ江寺駅のあいだを何度も歩いた。no.109 Dec. 2021 ※ネコの斑が、鼻筋を境に左右に分かれているもの

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