FN109号
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ナゾの自動販売機 はちさんとの出会いから2週間ほど経ち、この日は月江寺駅の裏側へ回ってみた。路地を進むと、「倉沢製あん所」とかかれた看板が見えてくる。「え、自販機があるよ」。友人とともにその場へ駆け寄る。お店の前にはさまざまなあんこの商品が入った自動販売機が置かれていた。こしあんやつぶあんなど見慣れた名前だけでなく、ゆずあん、うぐいすあんなど味が気になる商品もある。悩み抜いた結果、ゆずあんの最もなか中を購入した。甘すぎず、ゆずのさわやかな酸味が口のなかに広がる。あっという間に食べきっていた。次はトースト用を買ってみよう。私の地元では、あんバターが塗られているコッペパンが有名だが、トーストでも楽しめそうだ。 自動販売機について、先代の娘さんである滝たきぐちかずこ口和子さん(70)にうかがった。「倉沢製あん所」は昭和25年に開業した。約20年前、店番をする和子さんのお母さんを少しでも楽させたいという理由から、自動販売機を置いたそうだ。設置には商品の種類や、日持ちといった課題があったという。忍おしのむら野村にあった卵の自動販売機などを参考に開発をかさね、今ので二代目だ。この自動販売機をひと目見ようと、近くの忠霊塔へ向かうさいに立ち寄るかたも多い。和子さんは今までのお客さんについて丁寧に箱から出すように話してくださる。一つひとつの出会いを大切にする姿勢をみて、倉沢のあんこはバトンのように人と人をつないでいるのだと感じた。赤く腫れたお土産 この日は富士山駅で電車を降り、月江寺駅を目指して進む。その途中、弁べんてん天公園に立ち寄った。日中の暑さとは一変、夕暮れどきになり涼しい風が吹いてきた。木々がざわめいている。その音にずっと耳をかたむけていたくなるほど過ごしやすい公園だった。公園内には、山ノ神社と宗そうご吾神社という二つの小さな神社があった。公園内に神社があることにも驚いたが、神様どうしがケンカしないのだろうかと少し心配になる。公園の向かいにも神社が見えた。市いちきしま杵島神社といい、学問の神様である藤原道真が祀まつられているという。訪れた日は学期末だったため、無事に単位がもらえるようにとお願いした。「欲張りすぎた①テレビ番組でも紹介されたことがある自動販売機(2021年8月1日)②夕方の薄暗さが、神社により厳かな雰囲気を漂わせる(2021年7月22日)③はちさんがくつろいでいる。行く先で名前を変え可愛がられているのだろう(2021年7月5日)①②③13

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