FN109号
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富士山の大きさに思わず息をのんだ(2021年10月11日)かな」。そんなことを思いながら神社を後にし、月江寺駅へ向かった。駅につくと、足や腕に違和感がある。「かゆい」。そう思ったが最後、合計10か所以上蚊に刺されていたことに気がつく。思いがけないお土産をもらっていた。夏場の公園に虫よけをせずに立ち寄ったことを後悔した。次に行くときは万全な対策をしよう。蚊に刺された思い出も含めて、また新たにお気に入りの場所が増えた。赤く腫れあがった足に「かゆくない」と言い聞かせながら、帰りの電車に乗りこんだ。日本一と日常 その日も日本一の山は雲隠れしていた。私が富士吉田市を訪れると曇りが多く、きれいに富士山を見たためしがない。月江寺駅から富士山駅へ線路に沿って歩いていると、後ろのほうで遮断機のおりる音が聞こえてくる。河口湖方面から来たのは特急電車の富士回遊だ。線路内には標高800メートルを示す看板がある。この場所は景色をさえぎるものがないため、電車と富士山を写真に収める絶好の場所になりそうだ。晴れていれば富士山を一望できるはずだったのに。悔しい気持ちを抱えながらその場を後にした。 数日後、朝から気持ちのいい秋晴れが広がっていた。今日ならとっておきの富士山を見ることができるのではと、あの場所へ向かう。到着すると、目の前には包み込まれそうなほど大きな富士山が見えた。中腹部に帯状の雲がかかり、その上から頂上がのぞくようすは標高の高さを物語っている。 本学周辺は山に囲まれていて富士山が見えない。そのため、すがたが見えるとつい嬉しくなってしまう。このまちでは生活のなかに富士山が溶け込んでいるのだ。商店街のアーケードの先や駅のホームなど、いたる所から目に入る。マンホールや街灯の飾りにも描かれていた。まち全体で富士山を大切にしながら暮らしているのが伝わってくる。* * * あえて一本早い電車に乗り、ひと駅まえでおりて「駅間」を歩く。富士山駅と月江寺駅のあいだには、また歩きたいと思わせる魅力が詰まっていた。何度も歩いているうちにインターネットや本のなかにはない、私だけのお気に入りが増えていく。誰かに教えたいけれど、秘密にもしておきたい。この葛藤が癖になりそうだ。まだまだ頭のなかの地図が充実していく予感がした。14no.109 Dec. 2021
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