FN109号
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魅力いっぱいの傘 7月3日は前日の大雨が止んだものの、重い雲が空をおおい蒸し暑かった。葭よしいけ池温泉前駅から下吉田駅までの「駅間」を目的もなく歩く。一軒家の庭先で話す人や川で水浴びをする鳥もいて、ゆったりとしたときの流れを感じた。いったん下吉田駅まで進んだあと、行きとはちがう道でもどる。すると、入口に大きな垂れ幕がかかっている建物を見つけた。その垂れ幕には「槇田商店」と書かれている。マップを確認しても情報がないため、なかに入ってみることにした。 「わあっ、すごい」。すぐに声が出る。さまざまな色や模様の織物の生地が何本も天井から吊るされていたのだ。その生地は野菜をモチーフにしたもので、それを使った傘も展示してある。「お好きな『菜』を収穫してください」と書かれてあり、くすっと笑みがこぼれた。隣の部屋にはあじさいの傘が展示されている。流れている音楽や壁の色と相まって、暗く感じる梅雨にあじさいを見つけたときのちょっとした幸せを思い出す。その隣の部屋は、ぱあっと明るくなるひまわり畑だ。開いたひまわり柄の傘が何本も吊り下げられている。販売されている傘を取れば手になじむようで、大切に使いたいと思わせてくれた。裏地は表と違った色で織り込まれていて、傘をさすとき、自分だけが見える模様に心が踊りそうだ。 生地は一色に見えても、じっさいは白い糸との細かい縞模様になっていたり、より濃い色が入っていたりする。傘を見ていると、お店のかたが「全部同じように見える水玉模様でも、織りかたを微妙に変えているんですよ」と教えてくださった。たしかに、糸が縦、横、斜め、さまざまな向きに走っているように見え、光のあたりかたによって見えかたが少しずつ変化する。「お土産にどうぞ」と生地がついたショップカードをいただいて帰った。家でもいろいろな角度から光をあてて見返し、その変化にみとれてしまった。織るための計算 7月25日にもう一度行ってみると、その日は子どもたちが多く来ていて、傘のお花畑を楽しんでいるようだった。担当のかたが「傘にするためには織物の密度をあげなければならないんですよ」と教えてくださ下しもよしだ吉田駅から徒歩7分のところにあるギャラリー「FUJIHIMURO」で開かれていた展覧会を見つけた。「花、ひらく」という傘の展覧会だ。西にしかつら桂にある織物屋さんの「槇まきた田商店」と、その商品を広めようとする「装いの庭」。この二つの会社が作った渾身の空間に出会うことができた。髙橋杏佳(地域社会学科2年)=文・写真▷にんじんをモチーフにした柄
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