FN109号
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19あじさいの傘の部屋。背景とあいまって、あじさいに落ちる雨粒が思い出される(2021年8月1日)る。雨が漏れないようにするためだ。また、ひまわりの傘に使った生地を見せながら、「黄色の緯よこ糸の密度を変える織りかたで、黄色の濃さを変えているんです」とおっしゃった。たしかに同じ黄色でも、とうもろこしをモチーフにした傘は優しい黄色、ひまわりの傘は力強い黄色と、まったく色あいが異なっている。一つの色を変化させるには、緻密な計算が必要なのだろう。続けるために変わる 槇田商店は創業から150年以上が経つ。8月1日に展覧会を訪れたときには、その五代目社長、槇まきたのりお田則夫さん(74)がいらっしゃっていた。まずは、生地についてお話をうかがった。野菜をイメージして作った傘には伸び縮みする糸を使ったものがあるという。「伸び縮みする糸では、少しの引っぱりかたの違いで出来あがりに違いが出るんですよ」。生地を織る工程でもっとも気を使うことらしく、計算して作られているのがわかった。そのほかにも会場で流れていた製造工程のビデオを見ながら、細かい流れについて説明してくださった。槇田さんの口調は優しく、とてもていねいだ。しかしそれだけではなく、歴史ある店の社長としての厳かな風格が伝わってきた。 私は槇田さんに「長いあいだ、続けるためには何か変わらないものがあるのですか」と尋ねてみる。すると、「変わらないというか、常に新しいことにチャレンジすることですね」とおっしゃった。その言葉にハッとする。「続ける」というと、何か一つのことをやり続けるとばかり思っていた。しかし、何かに固執するのではなく柔軟に変化していくことが大切なのだ。今もその歴史をつなぐ槇田さんだからこそ、言葉に重みがある。もちろん織物へのプライドやこだわりも忘れてはいない。その証拠に、野菜や花の傘、水玉の傘など、さまざまな挑戦をしてきた槇田商店の傘はどれも手に取って開いてみたくなる。二つの会社が作り上げる 展覧会は、繊維・アパレル産業の事業開発や市場をつくる支援をしている「装いの庭」が企画を担当している。その代表、藤ふじえだひろやす枝大裕さん(37)にお話をうかがうこともできた。藤枝さんは展覧会の企画の誘致について、「めちゃめちゃ頑張りました」とはにかむ。伝統ある槇田商店のブランドを傷つけられないというプレッシャーがあったそうだ。そ
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