FN109号
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25①②お気に入りのカーブミラーを選りすぐった(2021年7月16日) ③一つの交差点に向かい合うようにしてカーブミラーが並んでいる。三つ巴の戦いを思わせた(2021年11月21日)①②お気に入りのカーブミラーを選りすぐった(2021年7月16日) ③一つの交差点に向かい合うようにしてカーブミラーが並んでいる。三つ巴の戦いを思わたずまいが違う。見かけるたびに写真を撮らずにはいられなかった。この旅のゆくえを見守ってくれたカーブミラーは、旅を記録するセーブポイントになったようだ。▽自分から呪いにかかった話 はちきれそうな大粒のイチジクをいただいたり、窓から入る風に乗ってキンモクセイの香りが漂ってきたりと、急に秋めいてきた9月のなかごろ。秋の「駅間」を歩こうと、気づけば電車に揺られていた。ここのところ雨の日が多く、しばらくぶりの曇天でさえ明るく感じられる。 以前は通らなかった道を行こう。そう決心して、どこへつながるのか予想もつかないままずんずん歩く。一人で心細かったものの、振り返ると、しろじろとしたもや44に囲まれた富士山が雄大に広がっていた。頼もしい味方ができたようで、踏み出す足に力がこもる。 途中、人も車もあまり通らない道があった。こういう道を行くときは、「後ろを見たら幽霊がいるかも」と想像力がかき立てられる。正直、ホラーは大の苦手だ。しかし恐怖心とはうらはらに、脳内ではすさまじい早さで怪談がつくられていった。ブルッ、と背筋が寒くなり、その場を離れようと一目散に駆け出す。もちろん後ろにはなにもいなかったが、思い込みで自滅したようで恥ずかしさが込みあげてきた。▽フックで引っかけられた話 今日は友人を連れて三つ峠駅から寿駅へ向かう。見事なまでに雲のない、真っ青な空がすがすがしい日だった。10月なのにこんなに暑いとは。半袖を出して正解だった。 出発して10分ほどたち、小ぶりなカーブミラーを見つけて浮かれていると友人が足を止25①③②

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