FN109号
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35んだので帰ることにした。自然の豊かさにふれた充実感もあったが、アーベントロートを見られなかったことが悔しかった。 10月16日、前に見られたところよりもっとあのピンク色の山に近づきたい。友人を誘って、見知らぬまちを地図も見ずに、山に向かってひたすら突き進む。しばらく歩くと、「文台山の湧き水」と書かれた看板を見つけた。毎朝、新鮮な水を汲みに行くのがひそかな夢だったため、湧き水を見つけて心がおどった。手で水を汲み顔を洗う。水が冷たくて、柔らかくて、ぬくぬくした体が冷めて気持ちいい。スッキリした気持ちになり、また歩き始めた。 出発してから1時間ほどたったが、目指していた山は一向に明るくならない。そろそろ引き返さないと暗くなってしまう。そう思い後ろを振り返ると、黄金色の稲穂の向こうの山が、うっすらピンク色になっているのが見えた。美しい風景に、アーベントロートを見るという旅の目的も忘れて写真を撮る。しかし山は思ったほど赤くなく、アーベントロートと言うには程遠い。これだけ歩いて遠くまできたのに、都留でアーベントロートを見るのはやはり難しいのだろうか。奇跡は突然に 11月5日朝6時ごろ、何気なく自宅のアパートの窓から三みつとうげつ峠方面を見ると、山が赤く染まっていた。今まで見たなかで山に一番近く、一番赤い。あまりの予想外の出来事に、呆然と山を見つめた。ピンク色というよりオレンジ色に近く、初めて見る色だ。窓を開けると、冷たい空気が部屋に入ってくる。消える前に、いそいで写真を撮った。20分後、山は元のすがたに戻っていた。この一瞬のあいだに山を見たのは私だけのような気がして、贅沢な気持ちになる。* * * 朝は苦手なので、モルゲンロートは最初から見ようとはしなかった。アーベントロートも何度見ようとしてもいまだに出会えない。「早起きして、もっとまっ赤な山を見たい」。赤く染まる山を見て、諦めていた心に火が灯った。霜田香菜子(国際教育学科1年)=文・写真わずか15分のあいだに色が刻々と変化するモルゲンロートを見ることができた(2021年11月5日)②6時43分①6時28分
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