FN109号
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39 3ヶ月間歩いてみて、森には思っていたほどの大きな変化はなかった。しかし、夏から秋にかけて細やかに変化するようすを見ることができた。私はこのハイキングで、観察する力が少し養われたように感じる。小さな変化への気づきを積み重ねることこそ、心を豊かにしてくれるのではないか。そう森は気づかせてくれた。クマが栗を持って行ったのではないか。そう想像してしまい、こわくなって後ずさりした。 やがてT字路に行き当たった。右を向くと、時代を感じさせる水道橋がそこにあった。奥行きがしっかりとあって、ずっしりとした重みを感じる。橋のしたの空間に風が集まってきて、額ににじんだ汗を爽やかに乾かしてくれた。10月16日 サクラの木はもうすでに落葉していて、歩くたびにパリパリと音がする。地面には、落ち葉以外にも、マツボックリや茶色いドングリが転がっている。モミジは先の部分が薄い赤に染まってきていた。 登りはだんだんと傾斜がきつくなっていき、最後の方は足にしっかりと力を入れないとすべってしまいそうだった。足元に意識を集中させていると、すぐ横にシカがすべった跡が何カ所も残っているのが目に入った。ほほえましくて、つい気が緩みそうになる。ついに都留アルプス最高峰の713メートル地点にたどり着いた。しかし私は複雑な心境だった。最高峰までのぼった達成感がありながらも、体力的にはもっと登ったつもりだったからだ。 下りは登りに比べてなだらかで、周りをよく見る余裕があった。森はとても美しかった。しかし「美しい」優しい木漏れ日がふりそそぐ(2021年10月16日)シカの足跡だった(2021年8月31日)という言葉だけで片付けてしまうのはもったいなかった。目の前に広がる景色をもう一度じっくり見てみる。森は見渡すかぎり果てしなく続いているようだ。緑と茶色の二色が視界を占領している。空にまっすぐ伸びている木は力強く、傾いている木はしとやかだ。横たわっている木には空虚さと同時に貫禄がある。いたるところに生えるコケには無邪気さを感じ、木漏れ日と影は森の表情をころころと変えている。そしてそれら森のすべてが合わさってうまれる生命力。私はそれをひしひしと感じた。元坂の水道橋(2021年9月29日)長岡芽依(国文学科1年)=文・写真
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