FN109号
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40no.109 Dec. 2021 7月中旬、雲一つない青空が広がる日のこと。私は影のことを考え、行き先も決めずにひたすら歩いた。最初に見つけたのは道路標識の影だ。「あ、おでんだ」。大根とちくわだろうか。季節外れではあるが、一度そう感じたらおでんにしか見えない。この暑さもあいまって冬がどんどん恋しくなる。 ふたたび歩きはじめると、道路に沿って並ぶ木々の影が、楽しそうにおどる人びとのように見えてきた。愉快な音楽が流れてきそうで気分がはずむ。ふだん見ていたはずの影が、思いがけず自分を明るい気分にしてくれた。 今度は足元も見てみようとしゃがみこむ。目に入ってきたのはアリだ。アリの後ろにつづく影は、アリの身体よりもずっと大きい。まるで、自分を大きく見せようとしているようだ。せかせかと進んでいくアリに寸分の狂いもなくついていく影を、目で追った。当然のことだが、見事だと感心してしまう。毎日通る道がこんなにワクワクするものだとは知らなかった。「暑いなぁ」とだけ思ってボーっと歩いていた今までの自分は、もったいないことをしていたようだ。一軒家の垣根の木々がつくった影。夏場は、遠回りをしてでもこの影で涼みながら歩いている(2021年7月17日)セミが声をそろえて鳴き、太陽がじりじりと照りつける夏の日、影は私たちの救いとなる。これまでの私にとって、影は「涼ませてくれるもの」でしかなかった。広がる想像力 大学生活に慣れてきたころ、道ばたの植物の影に魅了された。それは植物を細かくあらわしているように見えるが、実物とは違って弾力や感触のイメージが湧かない。もちろん、さわることもできない。すがたをそっくりそのまま写し出しているのに、影というだけで味気なさをおぼえる。小学校で「かげおくり」をして以来、じっくり見ることはほとんどなかった。この気づきをきっかけに影を意識しはもたらすかげかかげげかかかかかかかかかかかかかかかげかげかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげてみようと決めた。
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