FN109号
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49繊細な木 6月26日に西願寺を訪ねた。急な訪問のお願いだったが、住職である信彦さんと奥さまの啓けいこ子さん(73)はあたたかく迎えてくださる。前号のモミジの観察記録をお見せすると、ご夫婦は西願寺とモミジの話を教えてくださった。 西願寺のモミジは春先に赤い芽をつける。‌そこから黄金色の若葉をつけ、夏には縁へ。秋から冬にかけて紅葉し、茶色くなる。そのようすから‌「七変化もみじ」と呼ばれているという。啓子さんが教えてくださる見ごろは秋ではなく春先だ。「日の光を透かすと黄金色に見えて綺麗なの」。そう微笑まれる。4月といえば、私が西願寺のモミジを熱心に観察していたころだ。たしかに黄緑より、さらに明るい色の葉があった。芽吹きに気が急いで、青空を背景に日を透かした葉をきちんと見ておかなかったことが悔やまれる。‌ 名前の由来を聞いて、「変化の大きい品種なんだ」と驚く。しかし「七変化もみじ」は正しい品種名ではなく俗称だ。「記者のかたって徹底的に調べられるでしょう。以前、取材に来られたときに、七変化もみじという品種名はないことを調べてくれたんです」‌と、啓子さんが教えてくださる。残念ながら、‌そこで正しい品種名が分かったわけではない。「それでも七変化もみじと言えばこのへんの人たちは、‌上かみや谷の西願寺のモミジと分かっ上:葉が黄色に近い。日に透かせば黄金色に見えただろうか(2021年4月1日)下:根元が細く、3分の2ほどは桜で覆われている(2021年7月18日)

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