FN109号
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51 そうしてなんとか残った七変化もみじだが、現在は弱ってしまっている。大きくなった枝垂桜に覆われて光合成が十分にできなかったり、幹から枝の中までアリが食べてしまったりしたためだ。私は今年はじめて七変化もみじを見たため気がつかなかったが、今年は種の数がとても少なかったという。そう言われて思い出すと、 本学周辺のモミジは5月ごろびっしりと種をつけていた。いっぽう七変化もみじは何度も通うことで、ようやく一おっしゃるのは、今の七変化もみじが枯れたあとのことだ。 代々、大切にしてきたモミジをここで絶やしたくないといろいろ考えられてきた。しかし繊細なため、なかなかうまく育たない。種から育てられたとしても普通のモミジに育つだけ。接木もそうして今育っているものをご存知ないのに加え、取木のために枯れてしまったモミジのことがあってできなかったのだそう。そういう八方塞がりな事情があり、七変化もみじとよく似た木を植木屋さんのところで見つけときは何度も通ってなんとか売ってもらったそうだ。その木は西願寺の西側にある。けれど20年経ってもな▷植木屋さんから売ってもらったモミジ。高さは4メートルもない(2021年7月24日)アリに食べられ、枝のなかが空洞になっている(2021年7月24日)つ見つけたのだ。弱っていたのが理由だとは考えもしなかった。そこで延命のために植木屋さんへ頼み込み、なんとか枝を落としてもらった。しかしもう良くなることはないだろうと言われたそうだ。「あと2、3年ってことはないと思うけど、もう寿命が近いんだろうね。種から育つもんでもないし」。信彦さんがそうかなか大きくならない。七変化もみじに似ていることから繊細な木なのだろう。 こうしてモミジを存続させるために努力するご夫婦の話からは、長い歴史のあるお寺と七変化もみじを受け継いだとおり次へ渡したいという、強い責任感と思い入れが感じられた。接木すればいいと単純に思うかもしれないがうまくいく保証はない。むしろ弱く繊細な木で、元の木も接ぐほうも枯れてしまう可能性が高い。現状とこれまでの歴史を目の当たりにすると、つなぐための接木とはいえ、それを怖いと言われた啓子さんの気持ちが、切実に身に迫って感じられた。
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