FN109号
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no.100 Mar. 2019 54 今となっては ある日、車を運転していると、踏切の前でちょうど遮断機がおりた。ブレーキを踏みつつ電車が通り過ぎるのを待つ。たくさんの人を乗せて、電車は勢いよく走っていった。その光景を見てふと、近ごろ電車に乗っていないことに気づく。大学に電車でかよっていたときは、毎日のように利用していた。早起きして、発車時間を気にしながら支度をする。ときにはギリギリになって駅のホームまで全力で走ることもあった。今は運転免許をとったことで、生活のなかに電車での移動がめっきりなくなっている。 車を運転できたら、どんなに便利だろう。眠い目をこすりながら電車に乗り込むとき、いつも感じていたことだ。時間にとらわれなくていいし、人目を気にする必要もない。いろんな駅を経由することなく、目的地にすぐたどり着ける。車で大学にかよっていた友人が心底うらやましかった。しかし免許を取って運転にも慣れた今、電車にまた乗りたいと思うことがある。電車に乗ると 電車では車窓からの景色を楽しめる。なかでも印象に残っているのは、富士急行線田たのくら野倉駅の春の景色だ。駅のホームに停車すると、目の前には一面の黄色い菜の花と薄ピンク色の桜の木が現れる。駅舎の淡い紫色もあいまって、どこかの楽園にきたかと思うほど見とれてしまう。春という季節をぎゅっと詰め込んだような景色だ。電車内で座ってみていると、車窓に切り取られて一つの絵画のようにも感じられる。通学中のお気に入りスポットだった。当たり前だが、車に乗っていると運転に集中しなければならず、まわりに目を向ける余裕があまりない。目的地に向かいつつ、さまざまな景色を楽しませてくれるなんて、電車は動く美術no.100 Mar. 2019 54いう季節をぎゅっと詰め込んだような景色だ。電車内で座ってみていると、車窓に切り取られて一つの絵画のようにも感じられる。通学中のお気に入りスポットだった。当たり前だが、車に乗っていると運転に集中しなければならず、まわりに目を向ける余裕があまりない。目的地に向かいつつ、さまざまな景色を楽しま
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