FN109号
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998月25日 年に一度、「吉田の火祭り」の日には、金かなとりい鳥居から北きたぐちほんぐう口本宮までの通りに大だいたいまつ松明がならぶ。それらが点火されると富士吉田のまちが火の海になるのだという。‌‌富士吉田にお住まいの渡辺さん(85)に、明日の祭りについてうかがうことができた。明日の午後から通りを交通規制し、松明を道に立てるのだという。明日は祭りに参加されるのかとたずねると、渡辺さんは首を振った。「その……兄が亡くなってね。親族とか身内に不幸があったら祭りには参加せずにホテルをとってね、この場所を離れるんだよ」。話しづらいことだろうに、渡辺さんは丁寧に伝えてくれる。申し訳なさそうな顔をしている私に気づいたのか、「そういうお祭りだから」とやさしく付け足してくださった。‌‌火祭りには「ブク(服)」と呼ばれる習わしがあるのだという。ブクとは親族に不幸があったことを指す。火祭りは清浄であることが求められることから、ブクの家のものは火祭りの神輿や火を見ることを避けなければならないそうだ。 清純を順守させるようすからは、今まで体験してきたような祭りの浮足立ったにぎやかさは感じられない。明日、このまちはどのような顔を見せるのだろう。「吉田の火祭り」とは、富士山の「お山じまい」の秋祭りである。感染症の拡大をうけ、昨年度は中止となり二年越しでの開催となった。火祭りの炎は私たちに何を伝えてくれるのだろうか。撮影(2021年8月26日)

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