FN110号

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油淋鶏（若鶏肉のソース掛）千焼蝦仁＝エビチリ（芝海老炒の唐辛子ソース）て、食べるたびに幸福感が倍になっていく。料理といっしょに出してくれるジャスミン茶は、ピリッとした中華料理の刺激を優しくおさえ、料理の美味しさを引き立たせてくれる。料理とジャスミン茶の無限のループにはまったらもう止まらないというくらい、箸がすすんでしまう。　お店の人気メニューは唐揚げとエビチリだ。新さんは肉と魚は国産のものを使うというこだわりがある。とくに魚は、築地から仕入れをしているお店のものを使用している。「『良いものをお客さんに出したい』って」と鮎美さんが新さんの思いを教えてくれた。　新さんの料理は「ひらめき」でできているそうだ。仕入れでは、メニュー表にある料理にしばられずに、その時の食材を見極めて、どんな料理ができるかを考えて仕入れる。そのため、常連のお客さんが同じコース料理を注文したとしても、まったく同じ料理が出てくることがないそうだ。それがお客さんを飽きさせず、また来たいと思わせる秘密だ。　　お店を50年近く営業していると、イミコさんは昔と今とで、お客さんの食への考えかたが変わっているのを感じるという。「昔は『たくさんの量を食べたい』だったけれど、今は『良いものを少しずつ』という感じがするね。だけど、あの人はお客さんにお腹いっぱい食べてもらいたいから、たくさん作るの。」と笑って言った。たしかに新さんの作る料理はボリュームがあって、とても満足感がある。これからもそこに　これからの目標をうかがうと、新さんが「息子とまた一緒にこのお店をやりたい」と語った。新さんの息子さんは新さんと同じく中華料理の修行をし、10年ほど一緒にお店を経営していたことがあるという。息子さんはいま違う分野の職業に挑戦しているが、また一緒にお店をやることも考えているそうだ。イミコさんは「自営業は自由にできて定年がないでしょ。仕事は大変かもしれないけれど、元気なうちは続けたいね」と朗らかな笑顔を浮かべて語った。このお店に流れるなごやかなゆったりとした時間は、まるで家族と過ごしているときと変わらない。美味しい料理と新さん、イミコさん、鮎美さんのいる「新郷」は私の新しい故郷になってくれた。ガンシャオシャレンユーリンチー炒牛肉（牛肉の油炒め）ツオニューロオ1010no.110 Mar 202210no.110 Mar 2022このページの写真は2022年1月19日に撮影しました。長岡芽依(国文学科１年)＝文・写真