FN110号
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1212no.110 Mar 2022みんなのだがしや 大寒もすぎた1月23日は、春を感じる穏やかな日差しでつつまれていた。朝と夜はまだまだ寒いが、昼間はだいぶすごしやすい。ぎゅっとしている木のつぼみの緊張もそろそろほぐれてくるのではないだろうか。岩手県出身の私は、雪深い地元で1、2月に春を感じたことはなかった。早く春用のワンピースが着たいなぁ、と少し先の季節を待ち遠しく思いながらぽっぽや0000へむかう。お目当ては、ねっとり甘いやきいもと駄菓子だ。 駄菓子屋の前には小学生の女の子やお父さんと駄菓子を選んでいる子などで賑わっていた。女の子たちはここの常連さんのようで、好きなお菓子を買ってはお店のベンチで楽しんでいた。駄菓子屋は母屋に併設されている。大人がようやく2人は入れるような狭い空間が駄菓子やお面で埋めつくされている。駄菓子屋なんて小学生ぶりだろうか。タバコ型の砂糖菓子をくわえて、大人を夢見ていたあのころをおもい出す。 「今の子たちって遊ぶところがないでしょう。ここが一つの遊び場になってくれればいいなと思って。駄菓子屋なんてここらで見かけないしね」とオーナーの鐘かねがえヶ江初はつえ江さん(66)は優しく話してくれた。初江さんの願いの通り、週末になるとたくさんの子どもたちがやってくるそうだ。駄菓子屋が目的だったり、ピクニックの途中で寄ったりと使われ方はさまざまだ。「昔ってね、どこの家の子とか関係なく、子どもたちはみんなで面倒をみたものだったんだよ」。初江さんはここにくる子どもを自分の子どもか孫かのように接してくれる。長居したくなるような安心感はまるでおばあちゃんの家のようだ。やきいもと電車 やきいもを担当しているのは鐘ヶ江昭ふみお男さん(72)だ。やきいもの説明をする黒板では昭男さんを「焼き芋師」と紹介していた。思わず「焼き芋師なんですか」ときくと「そんな立派なものじゃないから。ただ焼いているだけ」と恥ずかしそうにしていた。ホクホクよりもねっとりを目指したやきいもは、あまりのおいしさに一日に何本も買っていく人もいるそうだ。 ふと、目の前の線路をみやると谷村町駅から河かわぐちこ口湖駅に向かって電車が出発しようとしていた。ホームにいた駅員さんが昭男さんに気付くと、軽く手を振る。昭男さんもそれにこたえるようにサッと手をあげた。「息子さんですか」と尋ねれば「いや、違うよ」と駅員さんのほうをみていた。富士急行線で働いている息子さんの影響で、職員はほとんど鐘ヶ江夫妻のことを知っているようだ。手を振った駅員さんにとって、昭男さんは同僚の親でしかない。それでも、気の置けない友人リノベーション前は森のような敷地だったようだno.110 Mar 2022
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