FN110号
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るのだそう。学生に元気でいてもらうためのひと工夫だ。 利休のお弁当は和物だ。学生がお弁当を好きに選べるよう、ほかのお店とメニューが重ならないようにしていると教えてくれた。ママに高校時代に毎日お弁当を持たせてくれた自分の母の面影を重ねる。日々あたりまえのように食べていたお弁当だったが、母もこうして身体を気遣ってれていたのだと感じあらためて感謝した。ママのお弁当を食べてあたたまるのはきっと生姜のおかげだけではない。ママのさりげない思いやりがとても嬉しかった。都留のお母さん 利休のお弁当販売は12年前からはじまった。本学に来ている販売車のなかでは一番最初に出店したそうだ。「昔は今みたいに学食も広くなくて、食べれない学生もいたからね」とお弁当販売を始めた経緯を教えてくれた。彼女はいつも、自分のことを「ママ」と呼び、「名前はいいからママとかお母さんと呼んで」と言う。学生たちのことを本当の娘や息子のように大切にするすがたに、本当に「ママ」という言葉がぴったりなかただと感じた。 「都留の学生は健気だね。当たりまえだと思わずお礼を言ってくれて、みんな素晴らしい」。長年お弁当販売を通して学生と関わってきたママは本学の学生のことを誇らしそうに褒めてくれる。「息子が100人いたら全員お嫁さんに欲しいよ」とおどけてみせるママ。チャーミングな笑顔に今日も元気をいただく。 いっぽうで、礼儀がなっていないと思った学生にはその場でしっかり注意をするという。子育てやご近所付き合いで地域の人と交流することが少なくなった現代、しっかりと悪いことを悪いと叱ってくれる人がいることはどれほどありがたいものだろう。褒めたり叱ったりして自分のことを見てくれている人の存在は、地元から離れてひとりで暮らす学生たちの心の拠りどころになっていることだろう。私も何か嫌なことがあったときや、ひとり暮らしで寂しさを感じているとき、ママの顔が見たくなって利休を訪ねる。ママからパワーをもらって、からあげ弁当でお腹を満たす。食べきるころには自然と「明日も頑張ろう」という気持ちになれるのだ。いちばん人気は母の味 からあげ弁当がメインの利休だが、一番人気のメニューは意外にもとり天弁当なのだそう。その理由についてママは「きっとお母さんの味がするのよね」とおっしゃっていた。とり天のタレは甘じょっぱくて優しい味がする。ひとり暮らしをして自炊をするようになったが、母の味にはまだまだ及ばない。とり天弁当を食べていると、母の真似をして作ってみてもなかなか再現できないというあの感覚を思い出す。 利休の店舗はいま、谷村町駅前にあるが、2年前までは本学から徒歩5分のスーパーマー黒いお弁当販売車が目印だ

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