FN110号
41/48

絶対に手放さない ママには3人の社会人のお子さんがいる。自身の子育てについて、ずいぶん前の話だけど、と前置きしながら、お子さんとコミュニケーションをとることを大切にしていたと教えてくださる。「ママのモットーは何よりお友だちづくり。勉強は二の次でいいの」。友だちがいれば生涯自分の居場所がある。それが大切なのだと語っていた。何かあったときに友だちは相談相手になる。ひとりで悩んで親からもらった命を捨てるようなことだけはしてほしくないと語気を強める。ママの言葉の端々から、困ったり悩んだりしている人を決して取り残さないという信念がにじんでいた。 ときには強い言葉で人を奮い立たせ、ときには優しく包み込んでくれるママの懐の深さに、人びとへの大きな愛情を感じた。「困っている人がいたら絶対に最後まで救うよ。絶対に手放さない」。力強く語るママが頼もしい。身体の面でも心の面でも支えになってくれるママの存在は私たち学生にとってなくてはならないものになっている。* * *  春休みに入ってから、利休の店舗を尋ねた。ご飯を食べにいったはずが、気づけば就職や恋愛の相談までなんでもママに聞いてもらっていた。「大丈夫さ、自信もって」と背中を押してくれたり、「あんたはどうしたいの」とずばりと聞いてくれたり。ママの言葉はいつも鋭くてあたたかい。その場しのぎの優しさではなく、本当にその人のことを思って出る言葉だからこそ、ママの言葉の一つひとつが心に響く。 「ママのお母さんがそういう人だったから。一生懸命育ててくれてね」。ママは面影を思い浮かべるように優しく話す。思いやりはこうやって繋がっていくのか。自分の大切な人を大切にすること。困っている人を手放さないこと。簡単に見えて1番難しいことをママから教わった。ママを見ていると自分の家族や友だちの顔が思い浮かぶ。「今夜ひさびさにお父さんに電話でもしようかな」。帰り道、自然とそんな気持ちになっていた。渡邊唯(地域社会学科3年)=文・写真ケットの隣にあった。当時は週末の昼の時間も営業しており、とり天のタレを魚の煮付けなど、ほかのメニューにも使っていて大好評だったという。今もタレだけ売ってくださいと頼んでくる学生がいるらしい。ママが「売ってもいいけど一万円だよ」と冗談を言うと「一万円でも買います」と言うから驚いてしまったと笑っていた。私も一緒に笑っていたが、そう言った学生の気持ちもよくわかる。懐かしくて箸が進むあの味は何度でも食べたくなるものだ。手渡すときに必ずひとことかけてくれる

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る