FN110号
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9集いの場 お店に入ると、常連であろうお客さんたちが楽しそうに話をしていた。テレビの音とストーブの香りのする店内は、何回も来たことがあるような居心地のよさを感じさせる。 「新郷」は、郷ごうたあらた田新さん、イミコさん、鮎あゆみ美さんが親子で経営する中華料理店だ。店名は、店主の名前の「郷田新」から文字をとって「新郷」と知り合いのかたがつけてくださったという。 席に座っていると、時折ガタンゴトンという音とともに電車が駆け抜けるのが見える。このお店のすぐ横には線路が通っているのだ。富士急行線を見ながら食事ができるなんてなんだか贅沢な気持ちになる。 新郷は外壁の黄色がとても印象的だ。大工さんに、黄色は目立つ、と言われその色に決めたという。鮮やかな黄色はたしかに目を引く。お店は2階建てになっており、1階には食堂と大広間、2階には個室が何部屋もある。店内は落ち着いた雰囲気に包まれており、重厚感のある木目のテーブルやイスと、中国を連想させる装飾品の数々が合わさって古風な雰囲気がただよう。 この地でお店を始めたのは、ここが新さんの地元だったからだそうだ。お店を始める前は、新さんは東京で料理の勉強をしており、イミコさんは同じく東京で美容師をしていた。結婚を機に今の地にお店をかまえた。お2人がこのお店を開業してからもう少しで50年をむかえる。新さんははじめ寡黙そうに見えるが、話してみるととても気さくで笑顔がよく似合う。イミコさんはサービス精神が旺盛で、何気ないおしゃべりに穏やかに付き合ってくれる。鮎美さんはハキハキとした語り口調が印象的で快活さがあり、3人が作る雰囲気がこのお店をより居心地のよい空間にしている。新さんのこだわり テーブルにはエビチリ、油ユーリンチー淋鶏といった数々の料理が並んだ。どれも彩りが良い。野菜は店内の照明を照り返すほどで、食べる前から新鮮なのが分かる。揚げ物は箸でつかんだ瞬間サクッという音がして、食欲が止められない。エビチリのエビはプリプリとした食感がたまらないうえに、一つひとつが大きく新さん、イミコさんのお孫さんの習字作品などが飾られる、あたたかみのある店内(2022年1月19日)

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