FN111号
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食材てみると自然のものに近い味がした。この味が山岸さんたちを「やろう」という気持ちにさせた。「東京のファーマーズマーケットにね、自然薯を売りに行ったんです。そのときにお客さんが、農家さんがいつも食べているとろろ444飯を食べたいと言ってくれて。それで、商品にできない自然薯をとろろ444にして販売することにしたんです」。キッチンカーでとろ44ろ4飯やこだわりのじねんじょ44444焼きを販売しながら、自分たちがつくるおいしい自然薯を発信しつづけた。 多くの人に自然薯を知ってもらうためには、より多くの自然薯を販売することが必要になる。そこで山岸さんたちは広い畑をもとめて2016年から都留市で栽培を始めた。根菜類を育てるのには土が大切だ。砂が混じっていないか、匂いがどうか、など山岸さんたちの経験から良し悪しをたしかめる。都留の土は栽培にピッタリだったようで、現在では、年間で一万本の自然薯を収穫している。笑顔がビタミン剤 山岸さんたちが都留でお店を始めたのは昨年の10月末だ。感染症の影響でイベントに出店できなくなったため、お店をはじめたという。「自然薯を知っている人って少ないんですよね。東京のマーケットに出店したのも自然薯を知ってもらうためでもありました」。その想いをうけてか、山岸さんのとろろ444飯はたくさんの人に食べられるようになった。店舗には、東京に出店していたころからのお客さんをはじめ、都留の常連さんがやってくる。剛さんはお客さんの笑顔がビタミン剤だという。「カウンター席に座っている人がね、これうまいなぁって言ってくれるのがうれしいですね。(厨房で)作っていて、あぁよかったな、と思いますよね」と目を細める。メニューも家族で考えていて、何百回も試作を繰り返すそうだ。愛情のこもったレシピだからこそ、いつ食べてもおいしい食事を楽しむことができる。* * * 安全でおいしいご飯を食べたい。それは簡単で当たり前な願いに思えても、じつはとても難しい。農薬を使わないようにするためには、そのぶん手間がかかる。自然に近いかたちで育てようとすると、自然特有の難しさを目の当たりにすることになる。それでも山岸さんたちは、あるがままの自然薯を栽培しようとしていた。それは自然のおいしさを知っている剛さんが思いついた「ご飯を食べて、からだを整える」方法だからだ。 お腹いっぱいご飯を食べて、じねんじょ44444亭を後にする。誰かのために全力で取り組む。そのために大切なのは、自分が健康でありつづけることだ。食材佐藤優美(国文学科3年)=文・写真12頁、13頁の写真はいずれも2022年5月29日に撮影しました。じねんじょ焼きがついてくるBセット。小鉢から副菜まで自然薯づくしだ

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