FN111号
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食材巣箱の確認をする実さん(2022年5月17日)チが年に1回しか蜜の採れる期間がないのに対して、セイヨウミツバチは年に3回ほど蜜を採ることができる。その代わり、国際基準で巣箱の大きさや、週に1回の点検をすることが決められているのだという。 都留では3月に菜の花が開花し、5月にアカシアの花、6月に栗の花が開花する。「これから菜の花のハチミツが採れる時期ですね」と実さんがおっしゃったので、後日作業に同行させてもらうことにした。帰るとき、「今はこれだけしかないけれど」と貴重なハチミツを味見させてもらった。口の中に入れた瞬間、「んー!」と言葉にならない声が出る。スプーン一杯の量からは想像できないほどの豊かな甘さで、とろっと濃厚なのに喉に張り付く嫌な感じはまったくない。私は採蜜の日が待ち遠しくなってしまった。宝探し 5月31日、採蜜の日。朝7時前、天気はどんよりとしていて、今にも雨が降りそうだ。朝早いこともあって少し肌寒い。採蜜をこんなに早い時間から行うのは、糖度の高いハチミツを採るためだ。ハチミツはミツバチが羽でパタパタと水分を飛ばすことで濃度が上がる。ミツバチがそれをするのは夜の時間帯なので、朝一番に採ったほうがより濃く甘いハチミツになるのだ。 事務所には実さんのご両親と奥さんがいらっしゃって、外にでて準備をしていた。ハチミツを搾るための遠心分離機や、ろ過に使う道具をはじめて見て、しだいに緊張してくる。遠くから7時を知らせる防災無線の放送が聞こえる。私はいつもこんな時間には起きていないので、放送を聞くのは久しぶりだった。それが、今日が非日常であることをさらに私に意識させた。 事務所から車で数分行ったところに養蜂場はある。思っていたより開けた場所にあった。巣箱を確認したあと、網のついたツバの広い帽子とビニール手袋をつけ、巣箱に向かう。遠くからだとハチがいる気配はまったくないけれど、近づくにつれて微かにブンブンという音が聞こえる。じっと見てみると、巣箱の出入り口でミツバチたちが行ったり来たりしていた。ほかの巣箱の出入り口では、まるで一つの塊のように数え切れない数が群がっている。またほかの巣箱では2、3匹がのんびせわしなく動き回るミツバチたち(2022年5月31日)

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