FN111号
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をのぞかせた太陽がハチミツをキラキラと照らす。とんでもないお宝を持ち帰ってきてしまった、私はそんな気分になった。 作業の終わった巣枠から遠心分離機の中にならべていく。入れ終わると今度は実さんと実さんのお父さんがハンドルを勢いよく回して分離機を回転させる。分離機を回すたびに香りがふんわり増していく。 一通り回し終わった分離機の内側にはハチミツがびっしり張り付いていて、下にはハチミツ溜まりができていた。分離機から出てきたばかりのハチミツを味見させてもらうと、舌のうえでしばらく形を保つほどとろりと濃くて、香りがフワッと咲いた。いつまでも口の中に満ちる濃密な甘さにうっとりしてしまう。市場に出回るハチミツの糖度は79度が基準であるのに、このハチミツは83度もあるという。しっかりとした甘さがあるにもかかわらず、後味は爽やかで、一度食べるとその絶妙さが忘れられない。 その後、目の粗さの違うザルや布でさらに3段階のろ過を行って不純物を取り除き、瓶詰めを行う。最後のろ過が終わって瓶に注がれていくハチミツは止まることがなく、流れ降りて最後にとろとろと重なってひだができる。向こう側が見えるほどの透明度は、ハチミツが純粋な甘さであることの証拠だ。* * * ハチミツが私たちの手に届くまで、丁寧に作業が行われ、手間がかけられていることを知り、私はハチミツにとても愛着が湧いた。そして、作業を通して実さんのこだわりとひたむきな姿勢を見た。 実さんはおいしいハチミツを届けるために糖度が高いものを厳選している。79度が基準だからと言って、妥協はしない。また、添加物や余計な水が入っていることは一切なく、「水一滴も嫌だ」と実さんはおっしゃる。 昨年の冬、みのる養蜂園のミツバチたちはうまく冬を越すことができず、数が激減してしまったという。それでも実さんは諦めることなく、巣箱の数をもとに戻すことを目標にしながら、甘さを追求する。ハチミツの甘さは実さんの思いそのものだろう。実さんはこれからも100%都留の甘さのおいしいハチミツを届けていく。長岡芽依(国文学科2年)=文・写真④④3つの巣枠を同時に搾ることができる遠心分離機(2022年5月17日) ⑤しぼりたての菜の花のハチミツ(2022年5月17日)⑤
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