FN111号
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no.111 Jul. 2022そしてつながる 取材中にもジェラートを食べさせていただいた。野菜そのものの甘みが、疲れた体を癒してくれる。おいしいです、と伝えると、うれしそうに目を細めた。小俣さんの優しさは、野菜づくりにもあらわれている。毎日、畑を見つづけることで、ちょっとした変化にも気がつくのだという。「人間と同じように、野菜もその日によって体調の良し悪しがある」。この言葉は、小俣さんが毎日ていねいに野菜に向き合っているからこそ説得力がある。「農業は手を抜こうと思えばいくらでも抜けるけれど、加えた分だけおいしくなるから」と語気を強めた。 農業を始めるまでのことを尋ねると、「たくさん挫折しましたからね」と話してくださった。小俣さんはさまざまな職業に就いた経験を持つ。そのなかで18歳のときの職場での経験が今に活きているという。仕事に身が入らず先輩に喝を入れられ、悔しいと思い勉強を始めた。すると同期のなかで4名のみ選ばれる幹部候補生になったという。その後の転職先でもパソコンのプログラミングに取り組むなど、気になったものにはどんどんチャレンジしていった。 今は宣伝に活用するための、SNSも気になっているという。「夢中になってこっち(農業)に手がつかなくなっちゃうから、やらないけどね」と話していたが、小俣さんならすぐに習得して、新たな挑戦を続けるのだろう。環境が変わっても、自分の興味関心を深め続ける姿勢を私も見習いたい。 小俣さんはどの話をするときも、豪快に笑っていた。挫折と言っていたが、すべて今につながっているのだ。取材中に「卒業後は何になるの」と逆に質問をされた。絶賛悩み中です、と答えると「私はいろんな職業に就いたけど、どれも真剣にやったから今に活きている」と話してくれた。くわえて、農業をやってみないかと声をかけてもらった。将来の選択肢が少し広がった気がする。* * * 小俣さんは、目の前にあるものに真剣に取り組む。そしてなにより楽しんでいた。また取材に来た私への気配りや、同じ職場で働く皆さんへの声かけひとつをとっても、人とのつながりを大切にしている。 「育っている状態を見ることが楽しい。そしておいしいと食べてくれると、やったなと思う」。農業は楽しいですかと尋ねたら、すぐに、このような答えがかえってきた。真剣に楽しむ小俣さんのすがたは、私にとって人生の指針の一つになった。真心を持って、今を大切に生きていきたい。トウモロコシは茹でたまま、皮ごとジェラートにする。味だけでなく、食感でも野菜を感じさせる工夫をしているのだ。阿部くるみ(地域社会学科3年)=文・写真◀暑い日に食べると一気に涼しい気分になる。意外にもアイスクリームやジェラートが一年でもっとも売れるのは1月だという(2022年5月11日)
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