FN111号
39/48

空を見上げる大学前の坂を登っているとき、振り返ると綺麗な夕日が見えた。一日の疲れが飛んでいく(2022年5月11日)すっきりとした青空。雲一つない。まるで「頑張れ」と言っているようだ(2022年5月18日)日は憂鬱だった。しかし、しっとりと濡れた山の青さや、クモの巣にかかった雨粒のきらめきなど、雨の日にしか見られない美しいものに気がつく。大きく息を吸い込むと緑のにおいが体のすみずみまで満ちていく。一か月間、同じ景色を眺めていたはずなのに、目の前にはまったく新しい世界が広がっていた。そのことに気づけたのも、私自身に余裕が出てきたからだろう。都留の暮らしにも慣れてきたようだ。 今まで私にとって天気とは、晴れか曇りか雨のどれかだった。しかし、よく観察してみると、空の隙間から伸びる陽の光や、雨上がりの瑞々しいにおいなど、今まで気にも留めていなかった瞬間に気づく。「見ることと観察することは大違い」という言葉がある。まさにその通りだ。 空以外にも見逃していたことがきっとたくさんある。気をつけて見てみると、当たり前に思っていたものにも新しい発見があるだろう。ゆっくりとあたりを見わたせる幸せをかみしめて私の世界を広げていきたい。 「都留は空が広い」。私が都留に来てはじめに感動したことだ。地元の名古屋の空は高層ビルや電線に遮られている。新居から見た空は曇り空だった。山の向こうまで広がる灰色の空は、不安に揺れつつ未来へ希望を抱いている私のように思えた。そんな空を観察してみよう。どんなことが分かるのだろう。 初日は日曜日。カーテンを開けると青空に白い雲が浮かんでいた。その日はうら山の散策をする予定で、絶好のお出かけ日和だった。それから二日間は、どんよりとした朝が続いた。変わり映えのしない空にカメラのシャッターを押す手も重くなる。どこかすっきりしない気持ちで大学に至る坂を登った。 水曜日に授業ではじめての学童実習があった。前夜、小学生たちと上手く関われるか不安を抱いて眠りにつく。朝、目を覚ますとカーテンの隙間から光がこぼれていた。思い切りカーテンを開くと、窓の外には澄んだ空が広がっていた。何とかなるさと背中を押してくれているようだ。 金曜日は雨がシトシトと降っていた。青い空が見えないのは残念だったが、山並みがいつもより生きいきとして見える。今まで雨の浅井祐音 (学校教育学科1年 )=文・写真

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る