FN111号
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no.111 Jul. 2022心をいろどる花壇原口桜子(学校教育学科1年)=文・写真 都留市まちづくり交流センターのまえで、色とりどりの花が来館者を出迎えている。わたしは4月から毎週、自宅から20分ほどかけてこの2階にある図書館に通っている。長く歩いたあと、鮮やかなパンジーとビオラが並ぶこの花壇を見て疲れがすっと消えていく。 ビオラの花びらのサイズを大きくした品種がパンジーである。パンジーは5センチ以上、ビオラは4センチ以下が目安だが、品種改良が進むにつれ、その基準はあいまいになっているようだ。ふとこれらの花の大きさが気になったので測ってみる。すると、5色のうち赤色のみよく見てみると、オレンジ色のビオラにオレンジ色のチョウがとまっている。(2022年5月3日)まもなく食べごろのイチゴ。収穫されるのを待ちわびているようだ(2022年5月14日)が5センチで、それ以外は5センチ未満だった。赤色の花だけパンジーなのだろうか。なんだか、この花が5人家族の末っ子のように思えて愛しくなった。 近くで見ると、その赤色の花に種ができていた。パンジーやビオラは花が枯れたあと、ガクの根元が三つに裂けて、それぞれにびっしりとついた種がはじけ飛ぶそうだ。まだ種が落ちていないガクを観察できたのは幸運だった。青空のもとで、チョウやミツバチとともにビオラに顔を近づける。わたしも小さくなって花びらの上を飛びまわってみたい。 3日後、花壇の下側にイチゴが植えられたプランターを発見した。何度も見たはずの花壇だが、イチゴの存在に気づかなかった。白くて小さなイチゴの花がぽつぽつと咲いている。淡く色づいた形の良いイチゴの実が、葉のかげに隠れているのを見つけた。春のおわりにパンジーは種をつけ、夏のはじめにイチゴが実をつける。季節のはざま444がうかがえて胸が弾んだ。 数日後、いつも通り観察をしていると、「花ですか?」と声をかけられた。どうやら夢中になって花壇と向き合うわたしを見て、センターの職員さんが出てきてくださったようだ。「この花は、去年の11月ごろに植えたんです。少し前までもっと咲いてたんですが」。たしかにだんだん花の元気がなくなっているようだ。理由を尋ねると、「寿命かもしれません。あとは花の密度の関係かもしれないです」とおっしゃる。そして、「イチゴももうすぐ食べごろですね」と赤く色づいた実をほほえましそうに眺めた。職員さんの横顔から、この花やイチゴを大切に育ててきたことが伝わった。 パンジーからイチゴへ季節のバトンが渡された後、花壇はどのようにわたしの心をいろどってくれるのだろう。 

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