FN111号
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晴れた日のコケ。オレンジ色の正体が気になり、調べたがわからなかった。菌類だろうか(2022年5月11日)コケの変身西佐和子 (比較文化学科1年)=文・写真 コケとの出会いは小学生のころだ。あるとき、庭のすみにひっそりとたたずむかれ44ら4を見つけた。じっと見ていると、すいこまれそうなほど神秘的な緑色に一瞬で魅了された。それから、道路のわきや建物のかげに、そのすがたを探すことが習慣になった。都留に引っ越してきてからも自然と水路へ目がいく。壁にはりつくコケを眺めるためだ。 コケのことをもっと知りたいと、図鑑を開く。そこには、乾いているときは茶色っぽいが、水分を含むと鮮やかな緑色に変わる種があると書いてあった。ふだんは気に留めない、さびた鉄のような色のかれら444が思い浮かぶ。本当に色が変わるのだろうか。まるで想像がつかない。疑うような思いから観察を始めた。 ていねいに眺めるようになってから3日目、ぱらぱらと雨が降った。何か変化があるかもしれないと、いつもより注意深くようすをうかがう。すると、わずかにコケの色が明るくなっていることに気がついた。雨が続くと、しだいにかれら444は緑色へと変わっていく。 ひときわ激しい雨の日、いつものように水路をのぞくと、きらきらと光る緑色が目に飛びこんできた。思わず圧倒されるほど、華やかで繊細な輝きだ。まるで水路の壁一面に、星くずが散らばっているかのような光景に思わず息をのむ。私は惹かれるままに水路のそばにしゃがみこみ、しばらく食いいるように見つめていた。 長かった雨がやむとかれら444は、たちまちもとのすがたにもどった。雨の日に見た輝きはなく、つい残念に感じてしまう。本当に同じ存在なのだろうか。たしかに目の当たりにしたはずなのに、いまだに認めることができない自分がいた。 今度こそたしかめようと、暗い色味のコケに注目して水路を見つめる。すると雨が降らなくても湿度や気温に応じてすがたが変わっていることに気がついた。私が見ていなかっただけでかれら444はずっと変わりつづけていたのだ。ようやくそのことを実感すると、見るたびに変わっていく表情から目が離せなくなった。今日はどんなすがただろうと、わくわくした気持ちで探すうちに、今まで意識してこなかったコケにも愛着がわいてくる。気がつけば、私はコケのことをもっと好きになっていた。雨の日のコケ。思わず触りたくなったが水路が道をはばむ。いつかリベンジしたい(2022年5月13日)
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