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111111スギの枝葉スギの枝葉都留市でアロマオイルづくりが行われていることを知り、都留市大野にある「Woods&Fields」へ向かった。Woods&Fieldsのアロマオイル「Tテッセesse」は、Tsuru(都留)の“T”とEssential oil(エッセンシャルオイル)からつけられた名前だ。ここを営む増ますだたろう田太郎さん(49)は、平日は神奈川県川崎市でサラリーマンとして働いているという。自然に対する思い 車を降りた瞬間、冷たく澄んだ森の空気に包まれた。予定より40分も早く到着してしまった私を、増田さんは温かく迎え入れてくれた。案内された平地は、二棟の小屋と白い家一軒に囲まれていた。増田さんは、「じつは初めてのお客さんなんですよ」と照れたように笑った。私も初めての取材だったが、その言葉と笑顔で少し緊張がほぐれる。 増田さんは今年の2月に起業した。幼いころは埼玉の田舎で育ち、生きものが好きだったという。東京に引っ越したのち、大学生までそこで過ごした。結婚して川崎市に住み、子どもと一緒に自然に触れる機会があったとき、「そういえば(自然が)好きだったな」と感じたそうだ。私も久しぶりに祖父母が住む田舎に帰ると、雑木林が風になびく音や塩辛い海の香りに懐かしさを覚える。私も増田さんも、ふだん自然から離れて過ごしていたからこそ、親しみを感じられたのだろう。 増田さんは里山の荒廃という問題を深刻に考えていた。そこで廃材となった枝葉を使ったアロマオイルの香りを楽しんでもらうことで、森林整備の活性化のきっかけになればと思い、オイル作りを始めたそうだ。オイル作りを始めるために視察に行った京都府の工房には、近くに畑や川があったという。理想の環境と出会った増田さんは、「これだ」と自然に囲まれた工房を作ることを決心した。 鳥の鳴き声が聞こえてくると、「鳥の種類とかも知りたいんですよね、生きもの好きなので」と森を眺めた。森にいるシカやセミについて楽しそうに話す増田さんの目はきらきらと輝いて見える。生きものが好きという思いが、里山を守りたい気持ちの根底にあるのかもしれない。理想の実現へ そもそもなぜ都留市で始めることになったのだろう。うかがうと、知り合いから間伐材を使用した特殊な炭を製造している会社を紹介され、その工場が都留市にあったことで話が進んだそう。 そしてもうひとつのきっかけとして、「都留ビジネスプランコンテスト」が大きかった工房は室内にあるものと思っていたが、じかに自然を感じる森のなかだった。(増田太郎さん=写真提供)恵みを活かす

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