FN112
12/56

12no.112 Dec. 2022粉砕機に入れやすいように枝先が細く、密度のある杉を拾うのがポイントだと増田さんは話す(2022年10月9日)の後援により、地方創生の一環として始まった。このコンテストで増田さんのアイデアを聞いた都留の方がたと、つながりがうまれたという。増田さんは、「コンテストに参加した大きな目的は、地域の人たちとつながることだった。一人では絶対に無理だった」と話す。穏やかながらも真剣な表情から、これまでの苦労や協力してくれる人たちへの感謝が伝わってきた。森のなかのオイル工房 工房見学を始めていきますねと増田さんは小屋の蒸留器のほうへ向かう。「Tesse」を精製する蒸留器からは、もくもくと白い煙が上がっていた。小屋は木造で、壁は木材どうしの間隔がとられている。壁の向こうの木々が見えて、小屋が森に溶け込んでいるように見える。木々が風にそよぐ音を聴きながら見学できるなんて、と贅沢な気持ちになった。 今回はスギのアロマオイルづくりを見学した。オイルの材料となる枝葉や燃料の薪は、おもに都留市産だ。蒸留の方法は「水蒸気蒸留法」で、ここで必要な冷却水もこの近くの川からくみあげたものだという。蒸留のあと、ろ過をして100パーセント都留市産のアロマオイルが完成する。 蒸留器で蒸されたスギは、鮮やかな緑から茶色に変色していた。温かいので足浴に利用できるという。蒸留器からスギを取り出してかごに移し替えてもらい、足を入れる。スギから出る湯気で自分の足が見えなくなった。癖がありながらもさわやかなスギの香りが鼻を抜けていく。これまではスギといえば花粉のイメージが強く、どのような香りなのか想像したこともなかった。 足浴してみると寒さと緊張でこわばっていた筋肉が足先からほぐれていくのを感じる。自分の足が見えるころには体の芯まで温まっていた。心地よさで思わず眠ってしまいそうになるが、「いけない、取材中なんだから」と気を取り直す。取材への引き締まる思いは保っていたが、いつしか張り詰めた緊張はなくなっていた。アイデアは膨らむ 増田さんにこれからの計画をうかがった。すると地域の人たちと連携し、畑で野菜を収穫する里山体験を考えているという。「蒸留器にかけた後のスギは、肥しにもなるんです」と近くにある畑へ案内してくれた。蒸されたスギを蒸留器から取り出してしばらく放置すると、畑の肥料に使えるそうだ。畑は自宅敷地内の一画を耕して作ったと話す。まだ作物は植えられていない。しかし、やわらかい土から鮮やかな緑の葉が並んで顔をのぞかせているようすが目に浮かぶ。これからどんな種類の野菜が育てられるのだろう。 ほかにも増田さんは、桃農園で廃材となった剪定枝でアロマオイルを作るなど、アイデようだ。このコンテストは、内閣府や都留市

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る