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1313①足浴のようす。スギのふかふかとした感触が心地よかった②③熱されたスギからしたたる水は、透き通ったピンク色をしている。白い布を浸すと、ほんのりと淡く色づいた④蒸されたスギはしばらく放置することで抗菌効果が弱まり、肥料にも使えるという⑤オイルはもちろん、蒸留のあとに分離した水にも杉の香りが強く残っている。抗菌スプレーとしても使えるそうだ(写真はすべて2022年10月9日に撮影しました。)オイルだけじゃない、スギの恵み②③④⑤①1キログラムのスギから取れるオイルはわずか3ミリリットル。この瓶の中のオイルがスギ1キログラム分だ(2022年11月9日)アを次々に話してくれた。増田さんの弾んだ声に私もわくわくしてきた。自然を「楽しもう」という思いがあるからこそ、自然を「活かした」アイデアが生まれるのだろう。都留100パーセントのオイル 後日、完成品が気になって「Tesse」を取り寄せた。手のひらにすっぽり収まる大きさの小瓶を開けると、ほのかにスギの香りが広がる。小瓶に顔を近づけると、香りが何倍にも凝縮されていた。蒸留されたスギの独特な香りが洗練されている。森のなかの工房見学で、スギの香りの湯気に包まれたことを思い出した。もしかしたら、香りと記憶は深く結びついているのかもしれない。 寝る前に香りをかぐと、足浴で眠たくなったときのように、自然と眠りにつける。スギのあたたかさだけではなく、さわやかで深みのある香りが心地よかったのだと気づいた。 このオイルの一滴一滴に都留の自然がつまっている。そしてオイルを通じて森に興味を持ってほしいという増田さんの思いと、その夢を応援する都留の人たちの思いが込められている。 廃材となったスギが、その良さを活かしたいという人たちの手によってさまざまな形で恵みを与えてくれている。人と人が協力しあって生きているように、人と自然も協力しあっていることを改めて実感した。相手の良さをわかっているからこそ、支え合ったり、良さを活かしたりできるのだろう。私も何かの良さに気づき、支え合えるものと出会いたい。もしかしたらすでに出会っているのかもしれない。原口桜子(学校教育学科1年)=文・写真

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