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151515②動物たちがちいさな体で一生懸命クルミを食べている姿が想像できる(2022年10月27日) ①芳醇な木の香りがするクルミ油(2022年11月4日) ③削りすぎないように箸の形を整える(2022年11月4日) ※スコヤ:金属製でL字形をしている直角の精度を確認するための工具に使いやすいという。またクルミは、実も余すことなく使うことができる。以前、青木先生が作ったクルミの実のキーホルダーをいただいた。これはニホンリスやアカネズミの食べ痕を利用してつくったものだ。キャンパス周辺の森にあったものだという。話を聞いてクルミを知っていくなかで、なんて優秀な木なのだろうと、つくづく感心する。 後日、青木先生が持っている都留市内でとれた木材を見せていただいた。その木材は2種類あり、それぞれ別の木だと思っていたら、どちらもクルミだという。木目や色が違うので驚きながら聞いていると、木の樹皮側と中心部で見た目が違うことがわかった。木を乾かす工程で、雨風に当たるため樹皮に近い部分から腐敗が早く進む。腐敗と聞くと少し悪い印象を持ってしまうが、それも木が持っている一つの個性だ。人に近い木と聞いてから、クルミの木がなんだか愛おしい存在になっていく。 青木先生の提案もあり、この木材を使って箸を作ることにした。使用頻度や水に触れる機会が多いことを考え、中心部の木材を使う。作るものにあった木材を選んでいく。適材適所という言葉があるが、まさにそのとおりだと思った。木と道具との距離 青木先生に箸作りの手順を教わりながら取り組む。まずは使う道具だ。カンナ、あて台、スコヤ(※)、ノコギリ、ナタなど、ならべられた道具を見て中学校の技術の授業を思い出す。授業でつくった飾り棚は今も実家で使っている。木で作られたものは長持ちする。そういえば座ってばかりの授業より、体を動かして学ぶほうが好きだったな。はやる気持ちを抑えつつ青木先生の説明を聞く。まずは大きなクルミの木材を細かく分けるところからだ。木の繊維に沿ってナタで割っていく。割れ目が斜めになってしまったため、機械で割ることになった。 つぎは細かく割った木材をカンナで直角にならす作業だ。青木先生は慣れた手つきで削っていく。削った木くずが途切れずにくるんと丸まった。教えられたとおりにやっていくが、なかなか綺麗な木くずができず悔しい。全身に余計な力が入り、削った面が右側だけ高く斜めになってしまった。まだ道具とも木材とも距離があるようだ。ときどきスコヤを使って直角になっているか確認する。そうし①②③
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