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しかし赤岡さんの熱意に、何もやらないよりやったほうがいいと背中を押してくれた。 2021年10月から自宅の庭にターフを立てて「ひとりマルシェ」がはじまった。すると、近所で面白いことをやっている人がいると評判になり、徐々にお客さんが集まるようになった。赤岡さんは「一度きてくれたお客さんがお友だちを連れてきてくれることもあって、それがすごく嬉しいです」とほがらかに語る。お店に訪れるお客さんは常連のかたが多い。色鮮やかな花にくわえ、赤岡さんの温かな雰囲気が心をつかんで離さないのだ。小学生の息子さんが撮影した赤岡さん(2022年9月11日)色とりどり 店名のミルティコロールはフランス語で「色とりどり」を意味する言葉だという。「お花を通してみなさまの暮らしが色とりどりになりますように」という願いがこもっている。花で幸せを届ける赤岡さんらしいネーミングだ。フランス語にしたのは小さいころから花の都であるパリが好きだったからだそう。赤岡さんは幼いころから庭の草花などの自然に触れて育ったという。花を見て、自然のなかでこんなにすてきな色があるなんてと感心したと話す。自然が持つ鮮やかな色に魅了されたのが原点になっていた。 赤岡さんのお父さんは銅や真しんちゅう鍮で作品を作る金属工芸家をしている。そのため、小さなころからものづくりを身近に感じてきた。「大人になってからも自然とOLではなくて、何か作りたいなと思っていました」とおっしゃる。20代前半のころは携帯ショップで勤めていたこともあったが、自然とかけ離れた生活にストレスを感じる日々だった。そうして癒しを求め、花屋への転職を決意したという。「やっぱりお花が好きなんですよね」と花に目をやる。花が心を彩り、支えてくれたという経験がある赤岡さんだからこそ、花を買ってくれた人が幸せになって欲しいという願いを人一倍強く持っているのかもしれない。暮らしに花を「お花って人に贈るイメージが強いけれど、暮らしに取り入れて、お花を見て幸せだなぁって思ってほしいですね」。贈答用ではなく、自分のための花を買って欲しいと赤岡さんは話す。私自身、コロナ禍以降、部屋に花を飾るようになった。それまでは母の日など、何かイベントがあるときにしか花を買う機会はなかった。しかし家ですごす時間が増えてからというもの、花に心を癒してもらっていた。「そういうかたすごく多いです。だから、少しでも長くお花を楽しんでいただけるよう、日持ちするものを選んで仕入れています」。赤岡さんは毎週甲府市の市場まで仕入れに足を運び、自分の目で見て選ぶことにこだわっている。また季節感やお客さんの声を取り入れたお店づくりを心掛けているそう。赤岡さんはほかにも、生花を長持ちさせる方法やドライフラワーの作りかたなど、花を◁お店の看板にかかっていたスターチスのリース(2022年9月11日)

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