FN112
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22no.112 Dec. 2022最大限楽しめるよう、さまざまなことを教えてくださった。さっそくヒマワリのミニブーケを持ち帰り、出窓にかざってみる。毎朝、水を替えながら少しずつ花開くようすを観察しているうちに、花に愛着を感じるようになっていった。ハッピーを込める 花を自宅で楽しんでほしいという思いは作品にも宿っている。赤岡さんに作品作りのこだわりをうかがうと、「自分が見てかわいいって思うものしか作りません」とおっしゃる。柔らかな口調のなかにお客さんに喜んでほしいという信念が垣間見えた。とくに大切にしているのは「自分がハッピーなときに作ること」だ。気分が落ち込んでいるときにはアトリエにすら入らないようにしているという。「負の感情のときに作るとその気持ちが作品に反映されてしまうような気がして。反対にハッピーなときは楽しくて手が止まりません」。作品には製作者の思いがそのままうつし出されるように感じる。赤岡さん自身が楽しんで作った作品は見ているだけで気分が華やぐようなものばかりだ。クリスマスをイメージしたスワッグ(2022年10月22 日)花の声を聞いて 10月22日、ふたたびお店を訪れた。クリスマス用のスワッグを注文するためだ。はじけた花火のような形をした橙色のピンクッションに、ほのかな柑橘の香りがするブルーアイス。目で見ても香りを嗅いでも楽しい花たちを一つひとつ選んでいく。赤岡さんは私が選んだ花をベースに、枝物や花を組み合わせてくれた。手際よく作業するなかで、「スワッグを作るときはお花にどこに入りたいか訊きます。するとお花がぴったりはまるところを教えてくれるんです」とおっしゃる。無理やり入れるのではなく、自然の魅力を最大限発揮できるように手助けする。そうすることで花がより生きいきしてくるのだ。* * * 赤岡さんが花を心から愛している気持ちが言葉からも行動からもひしひしと伝わってきた。「本当に好きという気持ちで向き合うとお花も応えてくれるように思うんです」。その言葉のとおり、店内に飾られた花は嬉しそうに上を向いて咲き、お客さんを迎えている。 花が咲くことを「花はなえ笑む」と表現することをふと思い出す。私にはなんだか本当に花が笑っているように見えた。自分がハッピーでいるために、花を大切にする。花の声に耳を傾ける。そうすることで、日々のささいな変化を敏感に感じ取れるようになる気がした。大切に飾った花は、今日も私の心を彩ってくれている。渡邊唯(地域社会学科4年)=文・写真
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