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23足の裏の感覚 お店の扉を開けると、菅すがやけんいちろう谷賢一郎さん(54)と晶あきこ子さん(53)が「お待ちしてました」と迎えてくださった。壁にそって並んだ和菓子が暖かい色の照明に包まれている。 賢一郎さんは「あ・・・んこを作ってる和菓子屋さん、うちだけなんだよ」とおっしゃる。あんこも手作りだったのか、と驚いた。すがやのあんこ作りは小豆の皮むきから始まる。小豆を煮て皮を浮かせたら、足で踏む。昔から変わらずに受け継がれてきた作業だ。「ガッガッガッて足が入っていく感じ」。気づいたときにはこの感覚が体に染みついていたという。全身を使って小豆を踏み込むようすはとても迫力があった。100回ほど踏むと黒い皮がむけて、白い実の部分が残る。 すがやでは和菓子ごとにあんこを作り分けている。砂糖の種類や量を調整することで、あんこの舌触りを変えているらしい。ほかのお店にはない、おいしさのひと工夫だ。「あんこから作っているからこそできる」。賢一郎さんは、わははと笑って少し照れくさそうにおっしゃった。私が「すがや」を知ったのは、本学への進学が決まって、アパート探しのために都留に来たときだ。家族へのお土産に最もなか中を買って帰った。食べてみると、サクッとした皮の食感となめらかなあんこ444の口溶けがたまらない。ペロリと食べ終えてしまった。今でも忘れられないあの和菓子はどのように作られているのだろう。お店のショーケースにはたくさんの和菓子が並んでいる(2022年8月5日)こだわりを味わう

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