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25一緒に味わうことで豊かになっていくおいしさを持ちあわせている。本物の和菓子 「今の人って、お餅もお団子もお饅頭も柔らかくないと受け入れてくれないんですよ」。晶子さんが少し困った顔をした。考えてみれば、コンビニなどで手軽に買える和菓子はいつでも柔らかい。最近では、洋菓子の要素も取り入れられて生クリームとあんこを組み合わせたお菓子もよく見る。「お餅は本来、保存食で硬いもんだから」と賢一郎さんもつぶやいた。 目新しいものを効率よく作り続けるこの時代が、私たちの味覚を変化させていることを見落としていた。「昔ながらの作りかたで作るとこうなるよっていうのを、そういうものを食べてほしい」。晶子さんの強い願いが伝わってくる。晶子さんはお嫁に来るまでは和菓子が苦手だったそう。すがやのていねいに作られる和菓子を食べたり、自分で作ったりするうちにその魅力を知っていった。 すがやの和菓子に込められたこだわりは、商品を大量生産するためのものではない。食べた人に手作りの良さが伝わるように、心の底から「おいしい」と言ってもらえるように、たくさんの手間をかけて一つの和菓子を作っているのだ。「本物を作ってる」。賢一郎さんの言葉は力強かった。* * * 大学生になった今、もう一度すがやの和菓子を食べてみる。はじめて食べたときと同じ、やさしい甘さだ。「味を守るにはねえ、手抜きができないな」と言った、賢一郎さんの誇らしげな表情を思い出す。 ふと、「手作りも味」なのか、と考えた。ていねいに作られた和菓子を食べると、作り手の思いや、どれだけ大切に作られているのかを想像できる。すがやの和菓子を通して伝わってくる味わいは舌で感じることだけではない。本物は作り手の思いや努力を相手に伝えることができるのだ。 私も本物を目指してみよう。一つひとつ、ていねいに書いた言葉を届けたい。賢一郎さんと晶子さんの和菓子作りに対する姿勢は、私の目標になっていた。渡邊結佳(国文学科1年)=文・写真①10升の小豆を大きな鍋で煮る。道具も昔から受け継いだものを使う(2022年11月7日)②都留名物のしそ餅。お餅をしその葉1枚で包んでいる(2022年10月3日)③焼きたてのみたらし団子。厳選したお醤油が効いている(2022年10月12日)①②③

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