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3131都留市上かみや谷に「割烹 い志ばし」という料理屋がある。入り口にかけられている緑色の暖簾には、白い「そば」の文字が堂々と書かれていた。お店を切り盛りしているのは、ご主人の安やすとみかずお富和男さん(76)と奥さんの晴はるこ子さん(75)だ。10月頭になると新そばが食べられると聞いて、2日に訪れた。お話を聞くなかで、お二人のこだわりが伝わってきた。秋の味覚、そば 時計の針が11時半を指そうとしているなか、ぐうっとなるお腹を押さえて店内に入る。座敷に案内され、広やかな畳の部屋に腰を下ろすと、実家で足をのばすときのような落ち着きがあった。しばらくして、「お待たせしました」と、晴子さんが料理を運んできた。ふわあっと、そばの香ばしさが鼻をかすめる。お盆には、つややかな新そばに具だくさんの天丼、小鉢などが置かれていて、どれから食べようか迷ってしまった。 まずは念願の新そばからいただこう。そばを思い切りすすると、口いっぱいに広がる豊かな風味に口元がゆるむ。お次は天丼だ。噛むと弾けるような食感のエビに、今が旬の秋
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