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36no.112 Dec. 2022まだ夏の気配を感じる9月27日、「ひびき布店」を訪れた。お店に入ると、あたたかくゆったりとした空気に包まれ、こわばっていた肩から力が抜けた。出迎えてくださった店主の田たなべ邉真まゆら響さん(43)にお話をうかがった。繕いというもの 取材前、ひびき布店が不定期にワークショップを開いていることを知った。何のワークショップだろう。気になって眞響さんにうかがってみると、「ダーニング」をやっているという。初めてきく言葉だ。 ダーニングとは、すり切れたり穴が空いたりした衣類を補修する、イギリスの伝統的な繕いのことだそう。あえて繕う衣類の色や素材と異なる糸を使い、その箇所をデザインのひとつとして目立たせるやりかたがあると聞くとなんだか興味がわいてきた。 眞響さんが繕ったものを見せてもらった。シミができたという水色のバッグに、大小さまざまなベージュの花がいくつも縫いつけられている。ほかにもこまかな模様があしらわれていて、バッグはふんわりとしたやさしい雰囲気をまとっていた。シミは教えてもらわなければ、わからないほど自然に模様のなかに溶け込んでいる。むしろ、バッグをいろどるひとつの模様のように思えた。 「自分のちょっとした世界観を表現させるっていうのが楽しいんですよね。遊び心っていうのかな」。繕いの魅力をうかがうと、ゆっくりと言葉を選びながら、そうおっしゃった。たくさんある繕いの方法からどれを選ぶのかはもちろん、糸の色やデザインのちょっとした工夫ひとつでも印象は大きく変わる。「繕いってけっこう自由なんですよ」とほがらかに笑う眞響さんは、生きいきとしていた。ぐるりと店内を見わたすと、色とりどりの糸が目に入る。今までは漠然ときれいだなあ、と思っているだけだったが眞響さんに感化されたようだ。今はこの糸にはどんな布が合うのだろうと、考えることが楽しくなっていた。いざ挑戦 話しているうちに、じっさいに繕いをやってみたいという気持ちがむくむくとふくらんでいく。とはいえ、2年以上も針に触れていない。尻ごみする気持ちのほうが大きかった。そこで、比較的なじみがある刺し子のキットに挑戦することにした。 翌日の夜、ひとりきりの部屋で針を手にとり、慎重に布を刺す。しだいに針の動きだけに没頭していった。しんとした部屋の空気を鮮明に感じる。ひとつ息を吸えば、すうっと心が穏やかになり心地よい感覚が身体を包み込んだ。この時間をずっと味わっていたい。一気に進めたくなる衝動をぐっと押しとどめ、毎日少しずつ進めていく。そうして完成させたころには、ダーニングをやってみたいという前向きな思いだけが心のうちを占めるようになっていた。その思いのまま、眞響さんに基本的なダーニングのやりかたを教えてもらう約束をし、お店へ向かった。 今回は穴をふさぐ方法をならう。眞響さんから簡単な説明をうけ、さっそく縫い始めた。ていねいに、と心のなかで何度も唱えながら惹かれて「楽しい」に
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