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43先代の方丈の描いたダルマ絵。どこかユーモアがある浅井祐音(学校教育学科1年)=文・写真写真はすべて2022年10月27日に撮影しました。宝鏡寺と方丈 宝鏡寺がこのように地域の中心となったのは、今までの方丈が地域とのつながりを大切にしてきたからだ。寺というと、法事や墓参りなど特別な機会にのみに訪れる印象がある。しかし宝鏡寺では、座禅や精進料理の体験会をひらいたり、句会や空手の会場として提供したりと、地域の人とのつながりを大切にしている。一月は初参り、二月は節分会など、毎月のように行事で人が集まる。そのほかにも、いつでも自由に散策できるように境内やうら山を開いている。 歴代の方丈もそれぞれの好きなことを活かして地域に貢献してきた。特に3代前の方丈は、能や茶華道をたしなむ才能あふれる人だった。また先代の方丈は、だるまの絵をよく描いたそうだ。今もその絵の多くが宝鏡寺に飾られている。佐藤さんは「宝鏡寺の方丈は、人によってさまざまな個性があるんだよ」と話す。宝鏡寺では方丈によって寺の雰囲気が大きく変わる。しかし、どの方丈もそれぞれの個性を活かしながら地域と関わってきた。今までの方丈たちがつないできた結びつきが、今でも宝鏡寺が地域の中心となっている理由なのだ。宝鏡寺と佐藤さん 佐藤さんは料理が得意で、感染症の流行前は地域の人によく精進料理をふるまったという。「のんびりとおしゃべりするのがいいんだよね。心がほっこりする」。人と関わるなかで、一人ひとり生きてきた体験が違うからこそ、おもしろいことに気づいたと佐藤さんは話す。今まで私は、誰かと話すということはつながりが外に広がっていくことだと思っていた。しかし人と話すことは、人との違いを知り、自分がどういった人間かを改めて見つめられる機会にもなるのだ。 「(料理をふるまうことを)周りの人から大変じゃないかと言われることもあるけど、全然苦じゃないんだよね」と佐藤さんは笑みをうかべる。一人暮らしをはじめて料理の難しさを実感している私は、佐藤さんの生きいきとしたすがたがまぶしく見える。「特技が一つあればいい。そこから話が広がっていくから」。佐藤さんは何事もまず自分自身が楽しんでいる。誰かの趣味や特技が宝鏡寺のつながりを通して誰かに伝わっていく。楽しみから絆が生まれ、そしてつながりが広がっていくのだ。その中心的な役割を、宝鏡寺が担い、今は佐藤さんがつないでいる。* * * 私ははじめて都留を訪れたとき、懐かしさを覚えた。それはきっと私の地元と似た、地域のつながりの濃さを、感じとったからだ。宝鏡寺には今も多くの人が集まっている。知らない人同士でも「楽しい」を通じて結びついていく。過去から未来へ、人から人へ。宝鏡寺が紡いできたつながりは、絶え間なくつづいていくのだろう。
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