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88no.112 Dec. 20228都留市で行われている教室「ちいさなかたち」では津軽こぎん刺しを学ぶことが出来る。こぎん刺しは、刺し子の技法の一つだ。山梨で聞く「津軽」の言葉に誘われて、「ちいさなかたち」を訪れる。ちいさなかたち 電車にのって禾かせい生駅までいく。「こんにちは」と出迎えてくれたのは、津軽こぎん刺し古作模様愛好家の佐さとう藤真ますみ澄さん(46)だ。真澄さんは自宅の2階で月に一度「ちいさなかたち」を開いている。教室が開かれている部屋は、真澄さんがつくった作品であふれていた。部屋全体が小さな美術館のようだ。多くがバッグや筆箱といった日用品で、どれも大切に使われている。 刺し子にはたくさんの種類があるが、「西こぎん刺し」「東こぎん刺し」「三みしま縞こぎん刺し」が津軽こぎん刺しに分類される。青森の寒い冬を乗り越えるため、麻でできた野のらぎ良着に刺し子をしたのが、こぎん刺しの由来らしい。地域によって、デザインや刺しかたが違う。津軽こぎん刺しは、ふつうの刺し子とは違い、縦糸を数えて針を通していく。縦糸をたくさんのバッグがかけられている。どれも真澄さんの手作りだ5本またいだら、3本あけて、また5本またぐ、といったように奇数で針を運んでいく。こぎん刺しの基本的な模様に「モドコ」というものがあり、それを組み合わせて作品をつくっていく。 教室には図案集など、津軽こぎん刺しに関する本が多くある。真澄さんは楽しそうに本をめくった。「なにかやりたい柄とかあったら、教えてください。なんでも教えます」。本に載っている柄はどれも細かくて目がチカチカする。初心者でもやりやすいデザインをいくつか教えてもらい「花こ」という「モドコ」を組み合わせたものをつくることにした。青い麻布に木綿糸で刺すのが伝統のようだが、私は明るくて元気な黄色で刺していく。ワクワクがある 麻より目がわかりやすい「コングレス」という布に、黄色の糸を通していく。真澄さんがスイスイと刺しているので簡単なのかと思ったが、やってみると難しい。縦糸を数えるだけでズレてしまうし、図案を眺めているだけでは完成しない。簡単な「モドコ」のはずなのに、どこを刺しているのか分からなくひと針をかさねる
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