113号HP用
30/48

ンク色を見つけた。こんな時期に何の花だろう。近くに寄ってみると、梅の花がほころぶように咲いている。今にも開きそうな、ぷっくりと膨らむつぼみもあった。なんだか美味しそうだ。それにしてもまだ12月だというのに、もう花が咲いているのか。思いがけず、冬を通り越して春の訪れを感じた。 1月6日、地元から都留へと帰ってきた。最寄り駅である都留文科大学前駅を出た途端、ひやりとした空気が身体に突き刺さる。帰省中に地元と都留の気温差を確認したら、都留のほうが6度も低いときがあった。どうりで寒いわけだ、と納得したことを思い返す。アパートに帰る途中で水路を覗くと、氷は帰省前よりもずっと厚くなっていた。そのようすに都留に帰ってきたことを改めて実感する。 翌日、ずっと気になっていた梅の木を見にいくと花はすっかり満開になっていた。咲きこぼれるとはこのことだ、と言わんばかりのすがたに圧倒される。いっぽうで同じように植えられているほかの木は2週間前と変わらず、まだほとんど花をつけていない。よっぽど日当たりが良いのか。それとも相当せっかちな性格なのか。いち早く咲いたこの木は、これからやって来る11月下旬、身体に冷たい風が吹きつける。暦のうえでは12月から冬が始まるため、これからさらに冷え込んでゆくのだろう。まだ経験したことのない寒さを思うと、ぶるりと肩が震えた。都留でのはじめての冬を前にして、恐ろしさと、それ以上に怖いもの見たさのような好奇心をもっていた。ふだんは家にこもりがちだが、たまには外に出てみるのも良いかもしれない。思いに突き動かされるまま、まだ重く感じる足を一歩前へと踏み出した。都留というまち 12月に入って少ししたある日、通学路の途中にある水路に、キラキラとした透明のかけらが落ちているのを見つけた。近づいてよく見てみるとその正体は氷で、どうやら水路に氷が張っているようだ。地元の千葉は都留に比べて温暖で、水路の幅も40センチほどしかない。都留にいるからこそ見ることができる光景だと思うと嬉しくなった。それから毎日水路を覗く。その日そのときの気候に応じて変わっていく氷のようすを楽しみながら過ごした。 帰省を控えた12月25日、ふらふらと歩き回っていると、冬らしい枯れ木のなかに鮮やかなピ水路だけでなく、水たまりも凍っているのを見たときはとても驚いた(2022年12月24日)入学前の3月上旬に訪れたときはまだ花が咲いていた。しかし、この花はその前に散ってしまいそうだ(2022年12月24日)30no.113 Mar. 2023 no.113 Mar. 2023 冬を味わう

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る