113号HP用
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32no.113 Mar. 2023 発見があった。タケの節は、緑色と茶色で交互に色が変わること。マツボックリは木の実であり、木にぶら下がっていること。サルノコシカケはがっしりとしていて、びくともしないほど硬いこと。知識としてはなんとなく知っていたことでも、じっさいに自分の目で見て、考えると一味違う。自分の経験として得た知識は何にも変え難いというのは、こういうことなのかもしれない。 知ろうと思って近づかなければ、気づかないことがある。何度も思ったことなのに、そのことをまた新鮮に実感した。私は忘れてばかりだが、気づき直すたびに少しずつ自分のなかに降り積もっていくものがあるはずだ。今はただ、たくさんの気づきを得て、その一つひとつを大切にしたい。 私は知らないものが苦手だ。だけれど、知らないことを知るのは楽しくもあった。当たり前だが、まだまだ知らないことはたくさんある。そこで少しの好奇心を理由に、一歩を踏み出す勇気をもてるようになりたい。引きこもりがちな私にとって、外に出ることの大切さを、しかとかみしめる大きな経験になった。とこの細く薄い線も大切な水や栄養分の通り道なのだろう。 足元に気をつけながら坂道を下っていると、地面から白っぽい針のようなものが突き出ているのを見つけた。これは何だろう。しゃがみ込んで、ぐっと近づいてみる。氷だ。滝の迫力ある水の流れが、そのまま固まっているかのような見た目にしばし見惚れてしまう。長いものは7センチほどもあり、そのうちの一つをぱきん、と手で折ってみた。指の先がひやりと冷たい。きっとこの氷が、霜柱というのだろう。幼いころから霜柱にはなぜ「柱」という文字がつくのだろうと不思議に思っていたが、ようやく合点がいった瞬間だった。小さな生きものたち マクロモードでの撮影に夢中になっていると倒木から何かが生えているのを見つけた。どうやらマツの幼木のようだ。体はひょろ長く頼りなさそうだが、赤い葉は、つんとしていて周囲を威嚇しているように見えた。まっすぐ遠くへと伸びようとしているすがたはエネルギーに満ちあふれている。それが無性にまぶしく、そして愛おしく感じた。 倒木に注目すれば、もっと面白いものに出会えるかもしれない。そう思って目を向けると、また興味をそそられるものを見つけた。細長く伸びている体は赤く、丸まって少し下を向いている頭の部分だけが白っぽい。この前スーパーで買った豆苗によく似ている。少し距離をとってみると、それはフサフサとしたコケから生えていた。では、これはコケの雌株や雄株なのだろうか。もともとコケが好きで、ほかの人より意識を向けていると思っていただけに、はじめて見るすがたに驚いた。 次に発見したのは、切り株だ。木の断面からチンアナゴのようにニョロニョロとしたものが伸びている。色味は、青と緑とオレンジが交ざったような絶妙なもので、いくつかは先端が赤くなっていた。まるで花のようにも見える。コケだと思っていたが、コケは胞子で増えるから花は咲かないはずだ。とにかく帰ったら詳しく調べてみようと心に決めてうら山をあとにした。* * * 今回の散策では、はじめて見つけたものがたくさんあった。それは今まで知ろうとしていなかったからだろう。山を歩くなかで、ほかにも西佐和子(比較文化学科1年)=文・写真
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