113号HP用
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にしていることが、北浦先生へ伝わり、授業に活用してもらえたのが嬉しくなった。『こどもフィールド・ノート』にはこどもたちの目線が詰まっているようだ。﹁生きる﹂へ 『こどもフィールド・ノート』は、「生きる」にもつながる。北浦先生の取材で聞いた「ただすれ違うだけの人たちにもお話をきくことで、みんなの人生にふれていく」という言葉が好きで、ずっと頭に残っている。人への取材は、その人の数十年を聞くことに等しい。当時の決断や考えかたを知るのは、人生の擬似体験に近いのかもしれない。 『こどもフィールド・ノート』に北浦先生が書かれた編集後記がある。そこには、北浦先生の丁寧な字で「この『フィールド・ノート』が、文章を綴った人や読んだ人にとって、新しい生活が、新しい世界が、新しいじぶんがはじまるきっかけ4444となることをねがっています」と書かれている。私たちも同じように発信できているのだろうか。私は記事を書きながら、自分の生きかたを悩み、探している。私が書いた文章から、誰かの新しい世界や自分が始まることもあるのかもしれない。そう思うと、迷っている時間も無駄ではない。* * * 取材のあと冊子を書いた児童に会うために「こどものてつがく」に参加させてもらった。青いカーペットのひかれた教室に、こどもたちが円になって座る。今回は北浦先生が、絵本を読んでから「人間全員に共通していること」「人間全員違うこと」というテーマを出した。カラフルな毛糸の塊をわたされた人が話すルールだ。毛玉を投げるときには、相手の名前を呼んであげる。これだけで学校の授業らしくなくてドキドキした。 ある子が「人間は死んじゃうことが一緒」と答えていた。いつもは聞きのがしてしまいそうだが今回は、はっとした。小学生から「死ぬ」という単語を聞くとは思っていなかったからかもしれない。生きることは死ぬことに繋がっていく。なんとなく話しづらい話題でも、気軽に話しあえる空間と関係が羨ましかった。授業の狙いはここにもあるのかもしれない。どれだけ仲のいい友だちでも、意外とこのような話はしにくい。 北浦先生は読者として、教師として『フィールド・ノート』を読んでいた。編集部には読者のみなさんから、たくさんのお便りが届く。一つひとつ丁寧に読ませていただいているが、直接お話をきくのは初めてだった。連綿と続いてきた『フィールド・ノート』は予想以上にたくさんの影響を与えているようだ。◁「こどものてつがく」で話す人が持つもの。クラスによって大きさが違う   (2022年12月20日)こどもたちが考えたことを付箋に書いて共有する(2022年12月20日)佐藤優美(国文学科3年)=文・写真

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