113号HP用
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都留で過ごす時間がもうすぐ終わりを迎えようとしている。最初は何もないと思っていたこのまちは、自分たちで歩いて見つめるたびに多くの発見で満ちていた。いつしか大切な居場所になった都留をずっと心に残しておきたくて、散歩にでかけた。18時 赤の広場 陽が沈んでひと気がなくなった本学の赤の広場の階段に腰掛ける。1月末、大学最後のテストを終えて、残すは卒業論文発表会のみとなった。大学にくるのもあと数回と思うと急に名残惜しくなる。今日は編集部の同期である辻口さんと都留の思い出の場所を巡ろうと約束していた。いつもどおり広場で合流して谷村町駅方面に進む。歩道が狭いので縦一列になって歩いた。都留興こうじょうかん譲館高校の脇を抜けて富士みちを行く。塾へ向かう高校生のすがたを横目に谷村町駅前の城じょうなん南公園に到着した。この公園はコイが泳ぐ池や遊具があり、過ごしていて飽きがこない。私が「たまに夜ひとりでブランコ乗りに来ていたんだよね」と告白すると辻口さんは少し驚きながら「私もよく夜に散歩で来ていたよ」と笑った。 昼間の大学生で賑わっている都留もよいが、私は夕暮れの都留が特に好きだ。あちこちを流れる水路の音に耳を傾けて散歩していると、時間の流れがゆっくりになったような錯覚に陥る。ふと定食屋「利休」からいい匂いが漂っていることに気づく。就職活動で悩んだときは、とり天を食べに行ってママに元気づけてもらったものだ。そういえばちょうど1年前の今ごろ、都留を旅立つ先輩が最後に食べたいと来店していたのを思い出す。あっという間にじぶんの番になったことに唖然としつつ、こうして何代にもわたって愛されてきたのだろうと少し嬉しくなった。 よよなててくなく

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