113号HP用
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42no.113 Mar. 2023 ﹁佐藤商店﹂は都留市中央にある、家族5人で営むお魚屋さんだ。お店はこの地で50年以上も商いをつづけているらしく、前を通るといつもお客さんで賑わっている。長きにわたって愛されている秘訣を知りたくなってお店をおとずれた。味で勝負 佐藤商店は富士みちから一本入った通りに建っている。赤字で書かれた「さとう」の文字が目じるしだ。自動ドアに手をかざして店内に入ると、奥にあるショーケースに目が留まる。赤身が鮮やかなマグロをはじめ、岩手県産の大ぶりの牡蠣や長崎県産のヤリイカなど、海のない山梨県ではなかなかお目にかかれないものまでずらりと並んでいる。分厚くてツヤっと光っている。そういえばちょうど夕飯の時間だ。魚に目がない私のお腹がぐぅっともの欲しそうにないていた。げんきの源マグロを買ったお客さんは「今日は寒いねぇ」と少し立ち話をしてから店を後にした。親しげに話していたので、常連さんかと尋ねると、花子さんは「昔からずっと来てくれる人。そういう人が多いねぇ」と目を細める。30分店頭には野菜やくだものなどが並ぶ(2023年1月16日)毎日の美味しいを            支えて 美味しそうな刺身にくぎ付けになっていると「いらっしゃい、今日は何にする」と店主の花はなこ子さん(80)が人懐っこい笑顔で私の顔をのぞいた。珍しい魚も置いてあるので、どこからやってくるのか気になって聞いてみる。「魚はね、富士吉田の魚市場から仕入れてるの」。市場に足を運び、全国各地から厳選した鮮魚を仕入れているそうだ。次男の秀ひであき昭さん(41)は「うちは魚が強みなので」とおっしゃった。  佐藤商店は創業から約50年を迎える。父親の重じゅうきち吉さん(83)が20代のころに東ひがしかつら桂の魚屋で働いたのち、行商などを経て現在のすがたになったそうだ。かつてはスーパーのように野菜や惣菜も売っていたが、時代とともにまわりに大型スーパーなどができた影響で、強みであった魚を中心に販売するようになったという。秀昭さんは「価格の面で大型店に勝つことは難しいけれど、うちは価格より美味しさで勝負しています」と力強く語る。特に力を入れているマグロは、注文をすればその場で切ってくれる。「はーい、マグロ千円分ね」と、奥から長男の弘ひろやす康さん(47)が刺身を持ってきた。お客さんに手渡された赤身は

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