113号HP用
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43ほどお店にいたが、その間ずっとお客さんが途絶えない。「今日のおすすめは何」、「牛乳は何時ごろ入荷するの」と店主とお客さんの会話が聞こえてくる。なかには1日に2回も来店するというお客さんまでいた。私がふだん買い物をするさい、お店のかたと話す機会はあまりなかった。しかし暮らしのなかにこうした温かい時間があると、お腹だけでなく心も満たされる気がする。私も花子さんにおすすめを聞いて献立を決めた日には、その日のあっという間に平らげた刺身の盛り合わせ(2023年1月31日)会話を思い出して心がほくほくするのだ。 「お客さんと話すのが元気の源」と花子さんが快活に語る。「ちょっと顔出さないと、病気になってないかって心配してくれるお客さんがいるから嬉しいね」。隣にいた秀昭さんも「お客さんと話して、声をダイレクトに聞けるのが一番いいですから」とつづける。お客さんと互いに思い合って、お客さんの声に真摯に向き合う姿勢が、佐藤商店が愛されている秘訣なのかもしれない。今日の「美味しい」を届ける秀昭さんはお店のSNSも担当している。老舗でSNSに力を入れているのは珍しいような気がしてうかがうと「魚はその日その日によって出せるものが違うんです。だからお客さんが買い物にくるときの参考にしてもらおうと思って」と話す。秀昭さんは市内のフォロワーのかたの目に留まりやすいような写真を撮ることを心がけているそう。じっさいにSNSをのぞいてみると、迫力満点の魚の写真に、クスッと笑えるコメントやおすすめの調理方法が添えられていて、今日は何を食べようかと想像がふくらむ。魚は新鮮さが命だ。渡邊唯(地域社会学科4年)=文・写真笑顔で肩を並べる秀昭さんと花子さん(2023年3月2日)真面目ながらユーモアのある投稿文からは、その日の一番美味しいものを届けたいという思いがひしと伝わってきた。「今日はどんな魚が入荷されているかな」。買い物に行く前にSNSをチェックするのが今ではちょっとした楽しみだ。* * * 「やっぱりお客さんに喜んでもらえると嬉しいですよ」と秀昭さんが胸をはる。仕入れ、接客、広報にいたるまで、お客さんの声を大切にして毎日の食卓を支える。そこには50年の月日が流れても変わらない、店主もお客さんも自然と笑顔になるような空間があった。地域に愛される商店は、地域を愛する商店だった。
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