114号HP用
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11左:十日市場付近の湧水が流れる滝。全部で5か所の湧水をみつけた。そのなかでも、お気に入りの場所だ(2023年4月28日)右:「天の滝」付近の大きな岩。ずっと眺めていると、顔のようにも見えてくる。10年後くらいには景勝地になっているかもしれない(2023年5月28日)男性は釣りが趣味で、釣りのインストラクターもしているという。いまは神奈川県の厚あつぎ木市に住んでいるが、親戚の家が西桂町にあり、幼いときから川で遊んでいたそうだ。川に入って観察をしてみたいという私に適切な服装や入りやすい場所を教えてくれた。「行ったらきっと楽しくなると思いますよ」という言葉に期待がふくらむ。そして、柄杓流川の川沿いは自然が広がっているので、動物の痕跡を探してみるのも面白いと教えてもらった。それから、何回かに分けて太郎次郎の滝から桂川に合流するまでの区間を歩く。あるときは一人で、あるときは編集部員と一緒に歩いた。転んで服が泥だらけになったり、ヘビを踏みそうになったりした。子どものころに戻ったかのようで楽しくなる。柄杓流川沿いに自生しているバイカモもたくさん見つけた。ほかにも、流れが穏やかなところでは、アユの稚魚たちが泳いでいた。小さな生きものたちが、冷たい水の流れる柄杓流川で懸命に生きるすがたが印象に残った。柄杓流川を観察していると、湧水が流れる滝を多くみつけた。近づくと、水しぶきが飛んでくる。さっきまで暑かったのを忘れるほど、涼しい空気に身体が包まれた。周りに生える杉は茶色く、水分で少し柔らかくなっている。崖の表面をよく見てみると、層になっていた。富士山の溶岩の跡と思われる溶岩質の地層の上に、土砂が混ざった地層が重なっているようだ。地層によって、石の大きさが違っている。長い年月をかけて、いまの柄杓流川ができたことを感じさせてくれた。***「何気ない自然を、自分の目でていねいに観察したい」という想いで何度も柄杓流川を歩いた。一言で柄杓流川と言っても、地図に載っていない場所や、支流が多くある。しっかりと根をはって生きる木々や、柄杓流川で暮らす生きものをみつけた。そして、そんな自然を楽しむ人々と出会った。はじめは川だけが書かれていた心のなかの地図がにぎやかになっていく。訪れた場所と、そこで出会った自然や人との記憶が結びつき、心に刻まれていく。歩いた場所の一つひとつが私にとって、記憶にとどめたい大切な存在になった。
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