114号HP用
13/52
1313といいですよ、と西先生から助言をいただく。糸の先のおもりを意識しつつ力を抜くと、すっと遠くへ針が飛んだ。「針を投げる」というより、「糸を振る」動作に近かった。下流から釣りをするが、まずは針につけるエサを用意しなければならない。獲るのはヒゲナガカワトビケラというトビケラの仲間の幼虫だ。浅瀬に降りて、幅20センチほどの石の裏に潜む幼虫を探す。西先生がひょいひょいと獲るのを見て、私も石をひっくり返すが幼虫はいない。西先生があっという間に10匹ほど捕まえた。自分でエサを取れなかったことにモヤモヤしつつ、捕まえてくださった幼虫を針につけ、いよいよ釣りに入る。釣りを通して川を知るまずはエサを獲った浅瀬のあたりから始める。練習通りに竿を構え、糸を振った。一投目は狙った位置に針が落ちたものの、水の流れが速くすぐに下流へと流されてしまった。魚は流れが穏やかな場所や、すがたを隠しやすい岩場にいることが多いらしいので、岩が水の流れをさえぎっている場所を見つけてもう一度投げてみる。しかし、うまくいかずにまた針が流れに飲まれてしまった。数メートル上流に移動して竿を投げる。今度は、向こう岸に生えていた木の葉に糸が絡まった。西先生に取ってもらい、もう一度投げるもまた同じ場所に絡まってしまう。針の先ばかり見ているからだろうか。練習では見えていたはずなのに、今は目の前のどこに糸が垂れているのかわからない。水面に日の光が反射して、川のどのあたりにエサが沈んでいるのかさえ見えない。投げ直した針が葉に絡まるたび、まわりを見ることができていない自分にもどかしさを覚えた。さらに上流へ移動し、先ほどより水深が深いところに来た。流れも緩やかなので狙いやすそうだ。それに、前に下見に来たときはこの辺りで大きな魚影を見かけた。柄杓流川は水の透明度が高く、遠くからでも魚のすがたが確認できる。ここで釣るぞ、と意気込んで竿を投げる。釣り糸につけた目印がゆっくりと下流へ流れていくのが見えた。糸が伸びきってからもう一度投げる。これを何度もなたを使って節間の皮を剥ぐようす左から、釣り針、おもり、目印(毛糸)、釣り糸。目印は釣り針より上につけることで、釣り針の位置を知らせる。針り糸におもりをつけ、釣り針を沈みやすくしたり遠くに投げたりできる左:右:左:エサとなるヒゲナガカワトビケラの幼虫。攻 撃しないので安全に捕まえることができる右:おもりは釣り糸を挟むように指で押してつける遊漁証を購入すると漁協組合が管轄する川で釣りができる。年間券(8000円)と、当日券(1200円)がある上から、竹を切り倒すためのノコギリ、枝や節間の皮を剥ぐためのなた、枝を切り落とすための剪定ばさみ
元のページ
../index.html#13