114号HP用
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25当日の入り口のようす。快晴で空が眩しいにつれて「お寺離れ」や「寺院消滅」といった言葉をよく耳にするようになった。以前、編集部員の取材に同行して他のお寺を訪れたさいにも、取材先のかたがこうしたことを語っていたのを思い出す。それほど寺院にとってお寺の在りかたは大きな課題となっているのだ。耕雲院ではこうした状況を変えるため、耕雲院の花まつりの形態や目的を変えることにした。転機となったのは今から6年前の2018年だという。お釈迦様の生誕を祝うことが目的のこのまつりを、地域のかたに楽しんでもらえるような、地域のためのまつりへと目的を変えたのだ。ひとつの取り組みとして、さまざまなイベントを取り入れているそう。例えば、地域のかたによるマルシェや寺ヨガと呼ばれる体験型のイベントがある。私は大学生になってはじめてマルシェのことを知った。しかし、まだ行ったことがなかったためどのようなものなのか気になっていた。花まつりを通してマルシェも楽しむことができるかもしれないと心が弾んだ。取材の途中で、河口さんが過去に行われた花まつりの動画や写真を見せてくださった。動画から聞こえる楽しげな声に胸が高鳴る。そのなかでもひときわ目を引いたのは、夜空に大きく咲く無数の花火の動画だった。色とりどりの花火の美しさと勢いに目を奪われる。私の地元ではこんなにも盛大に花火を打ち上げることはなかった。そのため、花火の美しさを味わうことができる都留が少しうらやましくなった。「花火は地域のかたが上げているのですか」と気になってうかがうと、「僕の弟です」と河口さんはおっしゃった。お寺としてはもちろん、兄弟で花まつりを盛り上げていこうと努力するようすに心を打たれた。耕雲院では花まつりが行われるさいに花火も打ち上げられる。今年は花まつりのときに打ち上げないが、10月にある秋まつりで打ち上げるそう。「ぜひ、花火を見に来てください。」そうおっしゃる河口さんの顔には笑顔があふれていた。花火が好きな私は、「絶対に見に行こう」と心に決める。秋の楽しみがひとつ増えた。今年の耕雲院の花まつりでは「お寺でゆっくり一日中」がテーマだ。日常から離れてゆったりと過ごしてほしいという思いが込められている。はじめての花まつりに期待が膨らんで当日まで待ちきれない。ゆったりとしたひとときいよいよ花まつり当日になった。私と編集部員二人で東ひがし桂かつら駅から耕雲院へ向かう。前日は雨予報だったため天気が少し心配だったが、この心配を消し去るほど空は明るい。東桂駅から10分ほど歩いたところで花まつりと書かれた大きな白い看板が私たちを出迎えてくれた。少し早く着いてしまったが、さっそく境内のほうへ行ってみることにした。境内に入ると、親子連れや大学生が早くもベンチに座って話をしていた。そのまわりで、屋台やマルシェの準備をしているかたがたの楽しげな話し声や笑い声も聞こえてくる。すでににぎやかな雰囲気に胸が弾む。どのようなお店があるのか。そう思い、屋台の横にある旗を見る。旗には私がずっと行ってみたかったお店の名前が書かれていた。「菊池わさび園」さん、「お惣菜まんじゅう藤江」さん、「走る天ぷらまるや」さんなど、この地域ならではのお店

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