114号HP用
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の理由ではない気がする。健康を思いやる優しい気持ちが由実子さんのスウィーツからは感じられるのだ。私の「やってみたい」こと織水のキッチンは、たまに若林さん夫婦の友だちや知り合いのかたがエプロンを着けて立っていることがある。じつは、私もそのひとりだ。由実子さんが不在のときにキッチンの仕事を手伝っている。きっかけは人ぞれぞれで、私は織水を訪れ、若林さん夫婦と出会ったことがきっかけだ。昌彦さんは「気軽に頼り合える、ファミリーのような関係だと思っている」という。私は小さな頃からカフェの店員に憧れを持っていた。扉を開けるとのんびりとしたカフェの雰囲気に溶け込んでずっと待ってくれていたかのような安心感を与えてくれる存在だ。私の将来なりたい職業で、トップ3に入る。「興味があるならお手伝いやってみる?」唐突な昌彦さんの提案に、「やってみたいです」とすぐさま反応してしまった。お手伝いは、私の夢をかなえるだけにとどまらない。同じように織水でお手伝いをする地域のかたと出会うことができた。一緒に作業をして一日が終わると、以前からお互いを渡邊結佳(国文学科2年)=文・写真知る仲間のように思える。それから、店内に置いてある『フィールド・ノート』を手に取ってくださったお客さんとお話をすることもある。読者のかたから直接感想をいただく機会も、あたたかい言葉をいただくことも、お手伝いをしていたからこその体験だ。勇気を出して踏み出した一歩が、三歩、十歩と増えていく。若林さん夫婦は、私の手をとって一緒に歩いてくれている気がした。「自分がやりたいことをやっているから、お客さんのやりたいことはかなえてあげたい」という若林さん夫婦の想いは、私の夢を現実にしてくれた。***カウンター席でコーヒーを飲んで、一息ついた。アパートに帰ったら自分でもコーヒーを淹れてみよう。心に小さく灯がともる。若林さん夫婦に出会って、大切なのはこの「やってみよう」という気持ちだということに気がついた。小さな灯が不安や自信の無さに消されてしまう前に、まずは行動をおこしてみよう。その経験はきっと、次も「やってみよう」とする私の背中を押すはずだ。下:ビーツとモリンガの五穀甘酒スムージー。砂糖を使用していないが、まろやかな甘みが感じられる(2023年6月8日)上:お手伝いをしている時に、昌彦さんが撮ってくださった写真。お店の雰囲気に溶け込めているだろうか(若林さん=写真提供)3131

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