114号HP用
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40no.114 Jul. 2023 の小さな発見から足元根本菜桜(比較文化学科1年)=文・写真菅野川の河原で丸みを帯びた溶岩石を見つけた。宝物を発見したようで嬉しかった(2023年5月17日)金山神社の石段に材料として使われている溶岩石。表面の小さな穴は、吸水性の良いスポンジのようだ(2023年6月22日)4月下旬、雨が降っているなか、用水路に沿って都留のまちを散歩してみた。谷やむら村町まちのほうへ歩いていくと金かねやま山神社があった。足元に注意しながら境内への石段を登っていると、不思議な材質の石が使われていることに気づく。表面に小さな穴がたくさん空いていて、泡が弾けたような見た目だ。地元の福島では見たことがなかった。ふと、高校の地学の授業でふれた溶岩石と特徴が似ていることを思い出す。この石も溶岩石かもしれない。都留と富士山のつながりを感じ、観察してみることにした。都留文科大学前駅のとなりの十とおかいちば日市場駅あたりには急な坂がある。その坂が溶岩の流れた跡だと聞いて、さっそく観察に出かけた。十日市場駅に着くとすぐに下り坂がある。ここが、かつて溶岩が流れた場所なのだろうか。溶岩石をたくさん見つけるぞ、と宝探しをするような気分で探しはじめた。神社やお寺だけでなく、民家の石垣や敷石などいたる所で発見した。道ばたに転がっている溶岩石をひとつ手に取ってみる。表面の小さな穴には、コケが生えていたり、さなぎ444のようなものがついていたり、クモの巣が張っていた。ふつうの石とは違い、溶岩石の表面には多くの生きものが住んでいる。まるで自然の宝石箱だ。河原で石集めをしていた幼い頃を思い出し、後日、大学から歩いて15分ほどの菅すげの野川がわ沿いを歩いてみることにした。川の水の透明度の高さに驚きながら、赤茶色や白っぽいコロコロとした石たちを観察する。すぐに黒くて角ばった溶岩石を発見した。まわりを見渡すと、さまざまな形の溶岩石が転がっている。丸みを帯びた溶岩石もはじめて見つけることができて嬉しい。気づかないうちに溶岩石を探すスピードが速くなっていた。ひとりで河原へ行くことは不安だったが、何気ない発見に心が躍り、夢中で溶岩石を探す。観察を重ねていくなかで見つけた石たちは、私たちの身近に、小さな発見がたくさんあることを教えてくれた。また、普段は家にこもりがちな私に、観察を通して都留のまちを歩くきっかけを作ってくれた。視点を変えてまわりをていねいに見渡してみると、まだまだ知らない気づきがあるはずだ。都留にある新しい発見たちとの出会いが待ち遠しい。
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