114号HP用
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no.114 Jul. 2023 44444月下旬、登校中にツバメが飛んでいるのを見かけた。地元の京都でも、中学校の通学路沿いの民家にツバメの巣があったことを思い出す。当時はヒナたちが大きくなっていくようすや、親鳥がエサやりをしているようすを見るのが楽しみだった。今回はただ見るだけでなく、成長を記録したいと思い観察することにした。5月3日の午後、強い日差しを避けるためぼうしをかぶって家を出る。数分歩いたところにある住宅街で、2羽のツバメが飛びまわっていた。かれらを真下から見てみると、あることに気がつく。真っ黒だと思っていた羽の色が濃い紺色だったのだ。ツバメは見慣れていたつもりだったが、じっくり向き合うことで新しい発見がうまれたことに驚いた。本学に向かい、1号館に作られているツバメの巣を見る。しかし、どれもボロボロに崩れていて現在は使われていないようだ。家を出てからまだ1時間も経っていないが、くたびれてきた。それでも巣を見つけたいという気持ちに背中を押され散策を続ける。本学の前から西へ進むと、5分も歩かないうちにモスバーガーについた。壁におわん型のきれいな巣を見つけ、思わずガッツポーズをする。巣の持ち主はどこだろうとあたりを見渡すと、向かいの電線に2羽のツバメがとまっていた。チュピチュピ、クルルルとかわいらしい声を聞いて、疲れがあっという間に吹き飛んだ。5月13日、小雨の降るなか、京都からやってきた母と観察に向かう。巣では1羽がじっと伏せていた。パートナーはお出かけしているようだ。他のツバメたちは、風を切るような速さで地面スレスレを飛んだり、ぶつかる寸前で壁をよけたりしている。サーカスのアクロバットのようなツバメの飛びかたに目を奪われた。「そんなに飛びまわって何になるんやろなぁ」と横山幸乃(国文学科1年)=文・写真モスバーガーの旗にとまるツバメ。至近距離で撮影することができた貴重な瞬間だった(2023年5月17日)母がつぶやく。その後調べてみると、雨の日はエサとなる虫が低い位置を飛んでいて、それを追ってツバメも低く飛び回るということが分かった。楽しげに飛んでいるように見えたが、かれらにとっては生きるための行動だったのだ。「ツバメがどうしているのか見に行きたい」という思いは私を観察へと連れ出してくれた。そのたびに新しい発見があったり、ワクワクしたりして、ますますかれらへの興味が湧いた。夏の終わりに飛び立ってしまうまで、まだ知らないツバメの一面や新しい驚きに出会いたい。本学1号館にあるツバメの巣。アパートのように一つひとつが隣り合っている(2023年5月16日)もの私を動かす

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