FN115号
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11看板のそばの狐のかざり。ひっそりと見守っているような気がする(2023年9月26日)案内人はトンボ熊太郎稲荷神社はどこだろう。まわりは民家と田んぼばかりだ。神社の入り口を探すため、自転車を降りてゆっくり歩く。民家と民家のあいだに「散策路」と書かれた小さな看板を見つけた。目の前に続くのは、自転車を押しながら歩くのが精一杯なほど狭い道だ。足元には砂利と陶器の破片が敷き詰められていて、じゃっじゃっじゃと軽い足音が響く。散策路に沿うように細い用水路が流れていた。目の前を飛ぶ赤みがかったトンボに案内してもらおう。少し歩くと、さくさくっという足音に変わる。足元を見ると杉の小枝がたくさん落ちていた。木に囲まれるようにして赤い鳥居がいくつも見えてくる。手前の鳥居には2匹の狐が飾られていて、まるで出迎えてくれたようだ。昔話とのつながりを想像して、わくわくしてくる。神社の本殿までには石の階段が10段ほどある。階段に沿って5つ並んでいる鳥熊太郎稲荷神社の鳥居(2023年9月26日)図書館で見つけた本をきっかけに、都留にたくさんの昔話が伝えられていることを知った。都留に伝わる昔話の地は今、どんなすがたをしているのだろう。2つの寺社を訪れることにした。昔の今話昔、山の上に住んでいた熊太郎という男が狐に取りつかれてしまいました。祈きとうし祷師を呼んで狐に話を聞くと「山梨稲荷に祀ってくれれば離れる。村によいことが起こるときはコンコン、悪いことが起こるときはキャンキャンと鳴いて知らせよう」と言います。ある日の夜明けに狐がキャンキャンと鳴く声がしてきました。案の定、その日の夜に村が半焼する火事が起こりました。しかし、狐の声を聞いて不安に思っていた村人たちはすぐに逃げて、けが人は出ませんでした。今でも近くの水源からは水がコンコンと湧き出ています。熊くまたろう太郎伝説

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